火曜コラム「オススメ書籍」第4回:吉川洋著「人口と日本経済-長寿、イノベーション、経済成長」中公新書

 本書のメッセージは、主に次の2点である。

 ①人口が減るから経済成長は無理という議論は正しくない
 ②超高齢社会に向けたイノベーションで日本経済は大きな経済成長の可能性を秘めている

 人口は確かに経済成長に影響を与える。人口が増えればプラスの影響、人口が減ればマイナスの影響である。だから、現在進んでいる人口減少は、経済成長にとってマイナスの影響を与えている。人口減少の加速は、マイナスの影響も加速することになる。

 しかし、これまで日本が成し遂げてきた高度経済成長は、人口増加による部分よりもイノベーションによる方が大きい。新たな商品やサービスが生まれなければ需要は飽和していくが、変化は新たな需要を創出し、イノベーションを促進するのである。高度経済成長期は「3種の神器」と呼ばれたものが、徐々に家庭に普及していった。それは、三大都市圏に移動してきた若年層の需要を満たすためであり、こうした需要に応える企業が大量生産を可能にした。若年層の新たな生活向けの商品・サービスがイノベーションを伴って提供された、と言える。

 そして、これからさらに進む高齢社会もまた、これまでにはない新たな商品やサービスを必要とする。医療・介護だけでなく住宅、交通、流通、都市など、すべてが変わらざるをえない。それにイノベーションで応じていければ、経済成長に寄与すると期待される。

 確かに高度経済成長期は人口総数が増えたため、その分の人口ボーナスはあったであろう。現在は逆に人口総数が減ってくるため、その分の人口オーナスは生じるだろう。しかし、人口が一定であればイノベーションの原動力が生まれず、需要は飽和するしかない。高齢化を伴う人口減少の方が、新たな需要が生まれる分、イノベーションが進んで経済が成長するかもしれない。

 そこで、本書からは、人口減少という全体数ではなく高齢化という人口構造に着目すべき、ということが言えるかもしれない。今、地方創生では東京一極集中という人口移動をなくし、人口減少から安定への脱却を模索している。しかし、踏み込んで言えばそれは貴重なイノベーションの機会を手放すことになる可能性がある(決して経済成長が全てではないが、不要とは言えない。本書の立場も同様である)。経済成長を重視する人々は「東京一極集中が成長の重要な源泉である」と言うが、社会の変化によって生み出される需要に応える力が東京にはあるとすれば、東京一極集中と地方の衰退が車の両輪となって経済成長をもたらしている、とも考えられる。

 また、本書のメッセージからは「人口減少を恐れてはいけない」ということが伝わってくるが、さらに進んで「人口減少の抑制(人口の安定)が良いこととは限らない」ということも言えるかもしれない。

 これらの点については、現段階では考えとしてまとまっているとは言えない。まだまだ吟味が必要だ。しかし、人口減少=悪(人口減少抑制=善)という固定観念が思考停止をもたらしている可能性もあるので、結論はともかく本書をきっかけにこうしたことを考えてみるのも良いかもしれない、と感じた次第である。

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