土曜コラム「今週のニュース」第5回:不登校の子供たちにオンライン教育が使えないことについて
今週も多くのニュースにツイートしたが、今日は下記のニュース(読売新聞)をあらためて取りあげたい。
「オンライン授業はコロナ理由に限定」、福岡市教育委の通知に不登校の保護者落胆
このニュースに関して、私は以下のようにコメントした。
不登校にも広げたい気持ちもあると思うが、広げると不登校が増える可能性とないとは言えず、どちらにも舵を切れないのではないか。こうした問題は至るところにある。
オンライン教育を不登校の子供たちにも広げることへの賛否については、私は門外漢なので触れてはいない。ただ、こうした決定の背景として、どちらの判断にもメリットとデメリットがあり、現状から動けなかったのではないか、と推測している。
不登校の子供たちは、これまで十分な教育の機会を得られなかった。そこに、新型コロナの影響でオンライン教育が導入され、物理的には登校しなくても授業が受けられるようになった。不登校の子供たちにとっては、オンラインではあるが教育を受ける機会が得られることになる。これは、不登校の子供たちにとっては希望であり、望ましいことである。
ただ、同時に望ましくないことも起こりうる。すなわち、これまで気が進まなくても登校していた子供たちに、「学校に行かなくても良い」と認識されて、彼らが不登校になる可能性がある。不登校に至るまではさまざまな理由があると思われるが、ある日突然不登校になるというよりも、何となく登校したくない気持ちが時間をかけて積み重なって、やがて不登校になるケースが多いと思われる。そうした子供たちは、オンライン教育で良いと知った時、登校する気持ちを失ってしまうのではないだろうか。
オンライン教育は緊急措置で導入されたものであり、「学校に行って教育を受ける」という前提そのものを見直したわけではない。その前提を崩せば、上記のようなマイナス面も無視できなくなる。こうした事情などから、前提を変えることなくオンライン授業がコロナ限定になったと思われる。
この件に関して、私は専門的知見を持ち合わせていないので、賛否を述べる資格はない。ただ、政策判断の多くは、こうしたプラス・マイナスの両面があり、決断が難しい。どちらにしても一方のプラスと他方のマイナスが生じるからである。そのなかでも決断しなければならず、新しい政策が検討の末に先送りされるのも、これまで存在してきたのプラスが失われるから(既得権益として打破すべきものもあるが)であることが多い。概して、プラスは新しいものよりも古いものの方が優先される傾向があるように思う。
ただし、そうした時には、マイナスとなる対象者をいかに別の対応でカバーするかが問われる。マイナスとなる対象者向けの政策を組み合わせることで、多様な対象に配慮したキメ細やかな政策のパッケージが構築される。大都市に有利な政策と地方に配慮した政策、大企業に有利な政策と中小企業に配慮した政策、などのパッケージである。
オンライン教育にこれを当てはめると、次のような論点が出てくる。そもそも、不登校の子供たちへのサポートが不足していたのではないか。不登校の子供たちがオンライン教育に希望を見出すのも、教育委員会の対応に保護者が失望するのも、不登校の子供たちに対する教育環境が十分でなかったからに他ならない。まずは、オンラインであるかどうかにかかわらず不登校の子供たちへのサポートをどう拡充すべきかを考えるべきではないだろうか。
そして、オンラインはサポートにも使えると思う。素人の発想にすぎないかもしれないが、先生やカウンセラーとの面談などにオンラインは役立つのではないか。あるいは、子供たち同士でのコミュニケーションなども、オンラインなら安心して加われるかもしれない。
もちろん、これからオンラインを活用した教育ツールがさらに出てくるかもしれない。オンライン教育を緊急措置だけに限定するのは、いかにももったいない。新たな方策が出てくれば、不登校に関わらず、すべての子供たちにとって新たな希望となるかもしれない。