日曜コラム「マイ・オピニオン」第6回:「不要不急」を問い直す

 新型コロナウィルスの蔓延を抑えるため、緊急事態宣言等では「不要不急の外出を控える」などの自粛が要請された。その結果、平日はテレワークの普及によって、休日は繁華街への人通りが減ることによって、人の動きが大きく減った。その後、緊急事態宣言も解消され、ようやく人の動きが戻ってきたのだが、それもつかの間、再び東京都などで新規感染者数が増加し、第二波の到来が懸念されている。

 今後、再び緊急事態宣言が出るかどうかはわからないが、外出の抑制が求められる場合はやはり「不要不急の外出を控える」ことになるだろう。これから外出の抑制と緩和をくり返しながらワクチン等の登場を待つしかないのかもしれない。

 ただ、この「不要不急」の基準は人によって異なる。極端に言えば、パチンコ店を訪れることは、パチンコをしない人にとっては明らかに不要不急だと思うだろう。しかし、パチンコ愛好者にとって、パチンコは生活に欠かせないものかもしれない。その人にとって「不要不急」の正解がバラバラであることが厄介である。

 ここでは、どちらが正解かを述べることはしないが、新型コロナウィルスの蔓延は、これまで当たり前のようにしてきたことが、もしかすると「不要不急かもしれない」と問い直すきっかけになるのではないか。テレワークの普及は「仕事は会社に行ってするもの」という認識を覆し、会社に行く必要がなく自宅で対応可能な仕事がある程度あったと言える。

 また、経済への大きな影響が出ていることを考えると、新型コロナウィルスの蔓延は、私たちの経済が不要不急の需要によって成り立ってきたことも明らかにしたとも言える。もちろん、多くの人が外出自粛で何らかの我慢をしているのかもしれないが、そのなかでも自分なりの楽しみを見出している。経済が停滞することは大きな懸念材料だが、これからは不要不急ではない需要が開拓される方が望ましいとも言える。

 私が関心を持つ地方行政の分野でも、イベントの中止などが相次いでいる。このような事態は、既存の行政サービスが本当に必要なものかどうかを問い直すきっかけにもなるのではないか。もちろん、中止になって残念に思う人も多いだろう。しかし、「不要不急」の基準は人によって異なるから、残念に思わない人もいるはずだ。いろいろな考えの人がある中で、実際にイベントの中止を経験することは、今後のあり方を考える貴重な判断材料となるのではないか。

 私は大学院で公民連携の教育にかかわっており、人口減少等による省インフラの研究を行う教員・院生が多い。しかし、縮小すべきはインフラだけでなく行政サービス全般である。つまり、省サービスが必要になる。サービスもインフラと同様に経年劣化していくので、耐用年数もないから、常に更新の可否を省サービスの視点で判断しなければならない。

 拡充路線で進んできた行政サービスも、インフラとともに縮小の時代に入っていく。公務員の数も増えていくことは期待できない。拡充路線も見直しが不可避となる。新型コロナの蔓延は、行政サービス全般にわたって「不要不急」を問い直し、省サービスを進めていくきっかけにもしていく必要があるのではないか。

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