火曜コラム「オススメ書籍」第7回:Engel,Fischer,Galetovic、安間匡明訳「インフラPPPの経済学」きんざい

 PPP(Public Private Partnaeship、公民連携)を勉強する方には、必読の文献と言えるのではないだろうか。なぜならば、この本はいろいろな面でPPPの既成概念を打ち破る内容が盛り込まれているからである。まだ一読しただけであり、必ずしもすべてを理解していない段階ではあるが、現時点での感想を少し述べてみたい。

 日本でPPPを導入する背景には、インフラの老朽化と更新費用の低減がある。高度経済成長期から積極的に進められたインフラへの投資も、半世紀以上経過した現在、人口減少が進むなかで更新の時期を迎えつつある。その対応策として、更新の時期を遅らせる「長寿命化」やPPPつまり「民間企業の積極的な活用」などが行われているが、主な目的はコスト縮減や平準化等である。もちろん、学校の統廃合などインフラそのものの縮減も進められてはいるが、住民の反対などで難しい部分もある。

 しかし、本書はそうした取り組みとは別に、民間の側にも公共の側にも、PPPをめぐって問題のある行動が観察されるという。例えば、再交渉である。状況の変化に対応するには当初の枠組みを見直すための再交渉も必要であろう。だが、正当化できない再交渉も実際にはあり、利用者や納税者の利益を害して民間や公共を不当に優遇するものも見られるという。また、PPPを導入することで公共の側は初期投資を抑えることができるのだが、解放された資金を別の用途に使ってしまう傾向があるともいう。PPPは異時点間の支出に影響を及ぼしているとはいえ、長期的に見れば同じものもある。初期投資で浮いた分を別の用途に使えば、かえってコスト増加を招くだろう。

 日本でも、「PPPの導入がコスト低減の特効薬」と思われていないだろうか。しかし、PPPの導入だけで安心してしまうと、トータル、かつ長期的な視点ではかえってコストの増加をもたらしてしまうかもしれない。民間の力を借りることは大切だが、その前に、公共がPPPを活用する目的をしっかりと確認し、逆効果にならないよう常に自制をかけておかなければならないのではないか。

 本書はボリュームのあるハードカバーの本で、易しい本ではない。しかしながら、何度も読み返し(私もこれからそうしたいと考えている)、本書のメッセージをかみしめる必要があると感じた。

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