水曜コラム「公務員の学び」第8回:積極的に研究者との交流を
私は、今年で公務員を退職して14年目を迎えている。公務員を14年間経験したので、社会人として公務員と研究者を14年ずつ過ごしていることになる。いずれも政策を対象としているから、政策を公務員として、また研究者として14年ずつ見てきた、とも言える。
誤解を恐れずに、両者の政策に向き合う姿勢の違いを極端に述べるとすれば、公務員は政策を「するべき仕事」として捉えている。これに対して、研究者は政策を「問題の所在」として捉えている。
両者を対比してみると、公務員は政策を「するべき仕事」として捉えているが、「問題の所在」として捉えていることは少ない。つまり、(前例踏襲や法律などによって)与えられた仕事をすることが多い。そこには、政策に対する問題意識が弱い(あったとしても、仕事を進めるための工夫など)と言える。
これに対して、研究者は政策を「問題の所在」として捉えているが、「するべき仕事」として捉えていることは少ない。つまり、問題解決のために考えられた政策をすること、現在の国と地方の関係、財政の仕組み、組織構造や公務員制度で実践できるかどうかまで視野に入れることは難しい。
決して、すべての公務員と研究者がそうだと言っているわけではなく、あえて極端に表現しているので関係者の方々にはご了承いただきたいが、どちらかと言えば両者にはこうした違いがあるように思われる。
だが、政策は実践して初めて意義があるものだ。公務員は、既存の政策に問題がないか見抜く洞察力と、より良い政策を行う実践力が必要になる。研究者は、公務員が「これなら一定の意義があり、しかもすぐにできる」と思うような政策を、どのように打ち出せるかが、有益な政策提言ではないか、と考える。個人的には、どちらの経験を同じ期間過ごせたことが、自分の強みだと感じている(逆に言えば、どちらも中途半端なのかもしれないが…)。
そうした意味で、公務員は研究の世界に少しでも足を踏み入れることを勧めたい。私が所属している学会は、公務員と研究者がともに集まり、議論する貴重な場である。公務員は研究者との交流を通じて積極的に問題発見をしてほしい。あるいは、公務員が大学院で学ぶことも有益だろう。研究者の思考を取り入れることで自ら問題発見できる力が身につく。