日曜コラム「マイ・オピニオン」第14回:「核のゴミ」最終処分地の選定をめぐって

 先週月曜日に、AbemaTVの「アベプラ」に急きょ出演しました。テーマは「北海道寿都町が『核のゴミ』最終処分地の調査を検討すると表明したことについて」です。私は、日本有数の原子力発電所立地地域である福井県敦賀市に24年間暮らし、原子力と地域の関係について研究(著書3冊などを発刊)してきたこともあり、立地地域の視点で原子力を見てきたことから出演を依頼されたのではないかと思います。ついでに、AbemaTVは、2016年12月に「「夢の原子炉」だった…もんじゅ廃炉に地元の人たちは」で出演して以来でした。

 今日のテーマに関して論点はいろいろあると思いますが、個人的には「核の」「ゴミ」という言葉に大きな問題が潜んでいると思います。ゴミを処分する施設は、いわゆる迷惑施設と呼ばれていて「NIMBY(Not In My Backyard)」という問題を抱えています。つまり、私たちの生活に不可欠な施設だが、自分の近くに建設してほしくない、というものです。家庭ごみの焼却施設や産業廃棄物の処分場などもこうした迷惑施設と呼ばれ、後者の場合は多くの自治体が法定外税という形で独自の課税をしているほどです。最近では、子育てに不可欠な保育園でさえ「子どもの声がうるさい」として避けられるケースも見られます。

 寿都町の場合、これに「核」が加わるので、問題はさらに大きくなります。東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、原子力に対する不安や不信が高まり、福島産の農林水産物が避けられるなどの風評被害も出ています。最終処分地は原子力関連の施設とはいえ、発電所ではありません。にもかかわらず、不安や懸念が町内外から高まり、町に対する要請や抗議があるようです。もちろん、不安や懸念自体を否定するつもりはありませんが、まずは正しいことを知り、議論を重ねてから判断すれば良いと思います。町では判断の時期を延ばすようですが、適切だったのではないかと思います。

 さらにいえば、処分地は日本で1箇所整備されるので、国内に類似施設がないものとなります。そのため、地域としての負担も1箇所に集中することになります。他に類例のないことが、自治体の決断にもマイナスの影響を与える可能性があります。

 こうした点に対して、私たちは何ができるでしょうか?主に3つあると思います。第1に、「ゴミ」という要素をできるだけ減らすことです。家庭ごみの焼却施設でもそうですが、施設の周辺には温水プールや公園など、市民の憩いの機能を加えて親しみやすい環境を整備します。「核のゴミ」の場合は、未来のエネルギー社会を象徴する施設として捉えることが必要ではないでしょうか?つまり、原子力への依存度低減というエネルギー政策の転換を促進するための場所とするのです。具体的には、処分地だけでなく再生可能エネルギーや水素など今後の展開が期待されるエネルギー研究開発の機能などを付加することではないかと考えます。

 第2に、当初は複数の自治体で並行して調査を進めることです。処分地の選定は3つの段階を経て進められますが、初期の段階では複数の自治体を候補にして(経済産業大臣の発言ではそうなると予想)、候補地の負担を減らすしかないと思います。

 第3に、これが最も大切なことかもしれませんが、他の地域も決して他人事ではなく当事者として捉えるということです。寿都町に対して「原発マネーに目がくらんだ」というような批判も見られますが、どの地域に処分地が選定されようとも、廃棄物を作ったのは私たち全員と言っても過言ではありません。したがって、「私たちが出したゴミをどう管理すれば良いのか」は私たち全員で考えるべきことで、そのなかには「引き受けてくれた地域に対して何をすれば良いのか」も含まれます。したがって、引き受けてくれた地域に自分が住んでいなくても無関係ではいられませんし、その地域は決して批判の対象にはならないはずです。

 これからさまざまな展開が予想されますが、私の研究にとっても非常に重視しているものなので、これからもフォローし、意見を述べてていきたいと思います。

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