日曜コラム「マイ・オピニオン」第15回:住みよさランキングのカラクリ-人口増加で順位が下がる?

 昨日はニュース記事の中から幸福度ランキングについてのコメントを詳しく述べました。せっかくなので、今日は別の視点からも述べてみたいと思います。

 実は、幸福度ランキングよりも長年にわたって発表されているものに「住みよさランキング」があります。東洋経済新報社が発行している「都市データパック」で紹介されていて、30年くらいの歴史があるものです。しかも、こちらは市を対象としていて、800余りの市をランキングしています。

 福井県内では、このランキングの上位常連の市がたくさんあります。福井市は県庁所在地で唯一、全国1位に輝いた市です。また、全国2位となった市も複数あります。毎年、上位10市の中に福井県の市がいくつか入っています。同じ北陸地方の石川県や富山県を含めると、半分くらいは北陸になると言っても過言ではありません。幸福度だけでなく、住みよさでも福井県のランキングは高いのです。

 しかし、昨日の記事でも書きましたが、住民の実感はそこまでではありません。もちろん福井は住みよい地域ですが、全国トップクラスというほどの実感ではないと思います。私は、その理由が3つあると考えています。

 第1に、冬の大雪です。近年は地震や台風などの自然災害が全国で頻発していますが、福井の大雪は毎年必ず起こります(3年前は災害レベルの大雪となり、その後はほとんど降っておらず、例年とは違った傾向になっています)。住みよさランキングには、この点が考慮されていませんが、雪で交通機関がマヒしたり事故が増えるため、住みよさに大きな影響を与えています。

 第2に、クルマ社会であることです。逆に言えば、公共交通機関が貧弱なことです。福井市の住みよさランキングを特に上げているのは、利便性です。買い物に便利なサービスショッピングモールが多くあります(ただし、イオンはありません!)。しかし、車がないと買い物は不便極まりないので、高齢者にとっては利便性が高いとは言えません。高齢化が進んでくると、利便性はさらに低下すると思います。

 第3に、人口が少ないことです。住みよさランキングを測るデータの多くは「人口当たり」で計算されます。800を超える市のデータのままでは人口の多い方が圧倒的に有利になるからです。福井は人口が少ないため、実際のデータよりも人口増加当たりで計算した方が大きくなり、ランキングには有利になります。したがって、人口が減少していると、ますます有利になるのです。福井がそうだということではありませんが、人口が減っている都市の方が住みよいと評価されるのは何となく矛盾を感じてしまいます。

 こうした理由から、福井の住みよさランキングが高くなります。ただ、ランキングの方法は何度も見直されていて、最近は福井県内の市もあまり上位でなくなりました。もちろん、昨日述べたように結果に一喜一憂してはならず、見直しのプロセスが重要だと思います。住みよさランキングを通じて、自分たちの住むまちをどうすればよいかを自分たちで考えるきっかけにすることが、最も大切なことだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。