金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第6回:一生懸命聞いてくれる人(だけ)に話しかける

 プレゼンテーションをする時は、やはり気持ちよく話したいものです。その時に大切なのは、聴衆の反応です。うなずいている人やメモを取っている人などを見ると、「興味を持って聞いていているな」と分かって、安心します。しかし、なかにはスマホを操作していたり、寝ていたりする人もいます。そういう人を見てしまうと、「退屈なのかな」と心配になってきます。話すことは事前に準備しているので大きく変えることはできませんが、こうした反応を見て、調子が上がってきたり下がってきたりするので、それも相手に伝わります。

 調子が上がれば話す方は自信が湧いてきます。通販でも「すばらしい商品ですよ!」と自信を持って伝えないと買って貰えないのと同じように、自分の話に自信を持たないと、相手に伝わりません。それどころか、逆効果になります。「つまらないものですが・・・」と言って贈り物を渡すのは日本人の良いところかもしれませんが、プレゼンテーションで「つまらない話ですが・・・」などと言ってしまうと、それだけで伝わらなくなってしまいます。

 ハッタリをかますことも大切ですが、よい良いのは、一生懸命聞いてくれる人(だけ)に話すことです。

 コンサートや落語など、熱狂的なファンが集まる場所でさえも、特に熱狂的な観衆を演者の前に集めることがあります。大規模な会場では、なかなか全体を見渡すことは難しく、演者の調子が上がるにはそうしたファンが近くに見えることが効果的です。

 プレゼンテーションは、それほど大きな会場で行うわけではありませんが、聴衆の反応が1人1人分かります。しかも、自分のファンばかりではなく、初対面の人も多いのが普通です。そこで、プレゼンテーションをしながら、熱心に聞いてくれて、大きく反応してくれる人を早い段階で探すのです。笑ってほしいところで笑ってくれる人などは最高だと思います。そういう人は、たいてい前方のセンターにいることが多いと思います。

 そうした人を見つけたら、その人(だけ)に話しかけることをススメます。良い反応を見ると調子が上がってくるからです。そうすると、他の聴衆の反応も良くなってきます。

 もちろん、会場の全体を見渡すことも大切です。実は、聴衆から見ると「自分に話しかけてくれている」と思うだけでも反応が良くなります。なので、最初から反応の良い1人だけにずっと話し続けることは必ずしも良くありません。しかし、全体を見渡すことは、いろいろなゾーンにいる個人にバランス良く話しかけることを意味します。「全体」というぼんやりとした存在に話しかけるわけではありません。あくまでも個人に話しかける感じで、それを複数のゾーンに配分するのが良いです。

 具体的に言えば、まず前方センターに熱心な聴衆がいないか探します。その人を発見したら、そこを起点にして他の熱心な聴衆も探してみます。探しながら、適当なタイミングでセンターの人に戻り、自分の調子も上げていきます。センター以外にも熱心な聴衆がいれば、センター→右手前→左奥→右奥→左手前→センターなどローテーションしながら話すようにすれば、全体を見渡しながら熱心な聴衆に向かってプレゼンテーションをすることができます。

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