土曜コラム「今週のニュース」第16回:国勢調査の仕事が少しずつ難しくなっている

 今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

 コロナ禍の国勢調査、精度に不安 高齢調査員の辞退続く

このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 答える側からも、集める側からも、国勢調査の実施はますます難しくなっている。5年に1回だからこそ、毎回状況が大きく変わるように感じる。

 国勢調査とは5年に1回、国民全員の居住や家族構成、通勤・通学形態などを調査する、国の重要な統計です。前回の調査は2015年10月に行われましたので、次の調査が来月に行われることになります。国の統計なのですが、1人1人の国民全員に(または世帯員全員について世帯の代表者に)調査票を記入してもらうため、市町村が最前線で調査を行っています。私も職員の頃に、国勢調査の仕事を手伝いました。担当部署は調査が円滑に進むよう、何年も前から準備をしています。

 とはいえ、実際に調査を行うのは職員ではなく、調査員の方に行ってもらいます。職員の仕事は、調査員の方々が集めてきた調査票を取りまとめたり、チェックすることです。ちなみに、これは本来国の仕事なので、市町村職員の人件費や調査員の報酬などは国が支払う形になります。国政選挙なども同様です。

 私が手伝ったのは、2005年でした。調査票の記入は国民1人1人が行って調査員の方々に渡すのですが、丁寧に記入してくれる人もいればそうでない人もいます。記入の際に細かい質問をされるようなこともあります。あるいは、ほとんど在宅の時がなく、渡したり受け取ったりするチャンスがほとんどないような場合もあります。

 こうした調査は積極的に書きたいものではないので、すべての人に書いてもらうのはとても大変です。私が手伝った頃はプライバシーへの配慮がかなり重視されるようになっていました。そこで、調査票を書いてもそれを入れる封筒にシールを貼って調査員に渡せば調査員が見ることはないので、職員が初めて封筒を開けて調査票を確認するようなケースも増えてきました。また個人情報を理由に記入を断る人もいたので、職員が出かけて書いてもらうようなこともありました。

 このように、書く人の協力が少しずつ得にくくなっていて、調査員の負担も重くなっているように思います。もちろん、近所づきあいが薄くなっていることや働きながら調査員をすることが難しいなどの事情もあり、調査員の担い手が不足してきたのではないかと推測しています。もちろん、デジタル化への取り組みは行われていて、調査票をインターネットで提出することも可能です。記事によると、5年前の調査で36.9%だったネットの回収率を、50%に引き上げることを目標に掲げているようです。

 もちろん、多くの国民は調査に協力してくれます。しかし、国勢調査は全国民を対象にしているので、全員の協力が不可欠なのです。もし協力してくれなかった場合、つまり調査票を書いてくれなかった場合は、不明としてカウントされてしまいます。それが多くなると、統計が国や地域の状況を正確に示せなくなってしまいます。そうしたことがないようにするには、調査員の方々の負担がやはり大きくなっているのではないかと推察します。

 以前は、住宅地図を作成している民間企業などに委託するようなことも報道で見たことがあります。それも1つの方法だと思います。いずれにしても調査票に記入する国民の協力が得にくくなっていることに加えて、調査票を集める調査員の確保も難しくなっていて、いずれも今後大きく好転することは期待できません。今回の調査が円滑に進むことを願っていますが、次の5年後に向けた対策を検討するための課題と対応も検討する必要があると思います。

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