木曜コラム「公務員の仕事」第20回-長期計画の策定プロセス(1)準備編

 先週のコラム(リンク)では、自治体の長期計画の概要について説明しました。皆さんには計画の内容だけでなく策定プロセスにも注目した方が良い、と述べましたので、今回から計画策定のプロセスについて簡単に説明したいと思います。まず、準備編です。

 私の知っている範囲では、長期計画の策定に1年から2年程度かけることが多いです。なぜそこまで長い期間がかかるのでしょうか。理由としては、まず、住民アンケートを実施してニーズを把握しているからです。住民が現在のまちを住み良いと感じているのかどうか、公共サービスの分野ごと(福祉・環境・産業・教育など)にどの程度の満足を感じているか、これから重要と考える分野は何か、などを詳しく尋ねているのです。私もアンケートを作ったことがありますが、調査用紙がかなりのページ数になってしまい、回答いただく住民の皆さんに大きな負担がかかっていると感じています。そうした負担に応えられるよう、長期計画ではアンケートで明らかになった住民のニーズを踏まえて、どのような政策を実行していくか検討しています。

 このアンケート調査をするのに、半年程度を要します。まず、質問項目を作成するだけで1か月はかかります。お金がかかるアンケートを何度も行うことはできないので、各部署から聞きたい項目を集めて、それをアンケートの形に整理するのです。次に、できたアンケートを数千枚単位で印刷・郵送するので、これも1か月弱ほどかかります。そして、住民からの回答に1か月程度、そして集計・分析するのに3か月くらいです。データをさまざまな角度から分析し、出てきた結果を見てからさらに深い分析を重ねていくのです。このように、アンケート調査をするだけで半年程度を要します。

 次に、アンケート調査の結果を踏まえて、すべての部署から今後の計画を提出してもらいます。書類を作成するのに要する期間は、1か月くらいです。そして、これらを分野ごとに整理し、計画の骨子として取りまとめていく作業が必要になります。これにも2~3か月はかかるでしょう。すべての部署から提出された計画を整理し、内容のチェックをして必要性や優先性などを確認していきます。担当部署から詳しい話を聞き、それらを計画に入れるかどうかを判断します。私が市役所で最後に所属していた企画調整課は、まさにそれを行うところです。当時の私は事務担当として、これをしました。

 もちろん、担当者の権限で判断できる範囲は限られています。そこで、重要性や優先性が高く、多額の費用を要するプロジェクトは、首長や幹部職員を交えて議論し、計画に入れるかどうかを判断していきます。こうしたプロセスを経て、最終的に計画の提案が生まれるのです。

 このように、準備段階として行うアンケートと原案作成の2つで、1年近くを要することになります。しかし、ここまでは、あくまでも準備で、最も大切なプロセスは、この後なのです。その話は次回にしたいと思います。

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