金曜コラム(土曜日掲載)「文章、プレゼンの基礎」第10回:万全な準備と豊富な経験があってこそ本番は場の状況に応じて調整できる

 プレゼンで話をする時、スライドを作って、セリフを準備して、練習をして…という形で準備をしていき、本番はそれを再現することに集中します。もちろん、準備は大切ですし、本番の良しあしはどれだけ準備をしたかに大きく左右されます。

 しかし、いくら万全な準備をしても、本番の緊張感や雰囲気は準備の時とは大きく異なるものです。例えば、前のプレゼンが大きな笑いを取った時や和やかな雰囲気で終わった時などは、次の自分の番にも影響してきます。自分のプレゼンが前のプレゼント同じようなトーンのものであれば、やはり前のプレゼンを超える結果を出したいと思うでしょうし、自分のプレゼンが冷静で落ち着いたトーンのものであれば、自分の世界に聴衆を取り込むために、つかみを大切にすべきと思うでしょう。また、聴衆もウケが良い場合と静かな場合などもあると思います。こうしたものは練習ではなかなか想像できるものではなく、しかもプレゼンの結果にも大きく影響してきます。そこで、当日の状況に合わせて、すぐに対応していくことも重要です。

 こうしたことに対応するには何が必要でしょうか。それは、やはり万全な準備です。準備とは、さまざまな想定をしておくことでもあります。通しでプレゼンをすることだけでなく、当日のさまざまな想定に応じた対応の方法も考えておくことが大切です。そこで、可能であればいくつかのバージョンを準備しておくと理想的です。

 例えば、海外アーティストのコンサートツアーでも、国によって反応が変わると言います。日本のファンは温かいので、ツアーの前半に日本公演を組むアーティストもいます。日本で好感触を得て、その勢いで他国へ乗り込むといったところでしょう。もちろん、国によって人気のある曲も違うので、セットリストの微調整なども行われていると思います。

 こうした準備をしても、なお当日は想定外のことが起きます。それにも対応できるようにするためには、やはり場数と慣れでしょう。何度もそうした場を経験することで、本番で自動的に調整することができます。柔道の試合などでも、体が勝手に動いて大技を決めて勝つことがあります。これも、豊富な練習と実践の経験に裏づけられたものだと思います。数多くの失敗を重ねて上達しているのではないでしょうか。

 もちろん、何度経験をしても失敗はあります。しかし、それらも上達のステップでしょう。どれだけプレゼン名人でも、貪欲に上達することを追及しています。そのためには、失敗を恐れず、失敗に学ぶことを繰り返すしかありません。

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