金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第13回:弱みも誠実に、正直に見せて、むしろアピール材料にする

 ビジネスや政策の提案に関するプレゼンテーションでは、いかに自分の提案が優れているかを強調します。もちろん、それは素晴らしいものだと思いますので、自信を持ってプレゼンテーションした方が良いでしょう。しかし、それで押し通し過ぎると逆効果になる場合があります。

 個人的にスマホやパソコンのカタログをよく見ています。いずれも「いかに素晴らしい製品か」を訴えていますが、年に何度かモデルが更新されていて、新商品が「ますます速くなった」「ますます軽くなった」など、改善点が並んでいます。つまり、最先端のものは基本的に改善の積み重ねなのです。また、スマホやパソコンは軽さと大きさがトレードオフで、大画面・大容量バッテリーが欲しい場合は重くてつかみにくくなりますし、逆に軽さとコンパクトさを求める場合は画面が小さく駆動時間も短くなりがちです。なので、「究極のマシン」などと謳われていても、「その時点で(暫定的に)最高」ということですし、他の点で犠牲になっている要素があります。

 ビジネスや政策の提案もこれと同じではないでしょうか。つまり、既存の課題をいかに乗り越え改善したかが重要で、すべての課題を解決して誰にでも最高のものはないと考えます。

 そうすると、なお残る課題も提案の中あることになります。これを示すべきでしょうか。聴衆の支持が得られるよう課題は示さない(欠点を見せない)、という方法もあるでしょう。ひたすら良い点だけを強調して、多少のハッタリも混ぜて押し通すことも1つのアピール方法です。しかし、一方で残された課題にも正直に触れるという戦略もあると思います。それは、今後のさらなる改善が期待される部分なのです。

 私の考えは次の通りです。まずは、プレゼンテーションの内容は既存の課題を乗り越え、その点で他の追随を許さないものとして堂々と自信を持って紹介すれば良いでしょう。しかし、課題がまったくないわけではなく、それも正直に述べ、これからも解決に向けて常に改善を追及していることを強調すれば、正直で良い印象が得られると思います。「これしか正解はない」「他の政策ではダメだ」といったプレゼンテーションでは過信かつ不遜な印象を与えてしまうように思います。自信を持ちつつも謙虚な姿勢で、聴衆に良い印象を与えられるようにしてください。


※ただし、プレゼンターの個性やプレゼンテーションの内容にもよるので、ここに述べたことが常に、誰に対しても正解とはかぎりません。時と場合に応じてアレンジが必要な時もあります。

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