水曜コラム「公務員の学び」第28回:政策は最も難しい分野である

 これは、私の恩師が繰り返し講義で話してくれたことです。私は大学院で経済学を学びました。大学は経営学部だったので、経済学も似ている分野で学びやすかったのでは?と思われるかもしれませんが、経済学はまったくの初心者でした。学生なら当たり前に知っている需要曲線や供給曲線から始めました。 大学生向けのテキストを読むことから始め、1年生の夏休みを使って(ありがたいことに職場から勉強の時間を与えていただきました)何度かテキストを読み、ようやく全体像をおぼろげながらつかんだ、という感覚でした。当時使われていたテキストは、サムエルソン『経済学第13版』(岩波書店)でした。当時は、それが最もスタンダードなものだったと思います。現在では、マンキューのテキストが最もよく売れているのではないでしょうか。実は、今マンキューを読んで改めて経済学を学んでいるのですが、とても分かりやすいテキストだと思います。

 経済学部を卒業された方も多いと思いますが、実際に勤めているなかで経済学、特に理論を駆使するような機会は少ないと思います。私は大学に所属していて理論的な研究に触れることも有りますが、実際の仕事に使わないようなものもやはりあります。もちろん、最先端の研究(行動経済学やゲーム理論などでしょうか)には難しい数式が使われていて、数学者でも難解なものもあると聞いていますから、仕事で使う余地はほとんどなさそうです。

 しかし、理論的な研究は確かに最先端のように見えますが、それはあくまでも理論です。理論は独自の発展を遂げていく部分もありますし、必ずしも現実の複雑な事情を反映しているとは限りません。むしろ、できるだけ単純化して理論の彫琢を図っていく部分もあります。

 そうした意味で、政策は理論に加えて現実のどろどろした部分まで含めて、多様な角度から考察していかなければなりません。したがって、現実にも精通していなければなりませんし、何よりも常識的感覚が問われる分野です。もちろん、政策を打ち出す以上、実践されることに意味があると考えます。

 このように、理論ももちろん難しいのですが、政策はさらに難しいものになってきます。むろん、あらゆる要素を組み込んだ最善の政策を、単独で打ち出すことは不可能と言っても良いかもしれません。それでもなお、公務員は政策を考え、実践する立場として最も難しい分野に身を置いていることを心に刻み、日々学び続けていく必要があると思います。

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