金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第18回:プレゼンはテキスト重視かイメージ重視か

 プレゼンテーションのスライドを見ていると、文字がびっしりと書き込まれて読むのも大変なスライドと、キーワードが大きく示されていてメッセージ性の高いスライドの2つの種類に大きく分かれると思います。

 前者の代表的なものが、政府の資料です。細かい文字が整然と並んでいるだけでなく、図表や写真も豊富に示されていて、ボリュームもありますがスライドに書かれていることを読めばほとんどの内容を把握することができます。

 これに対して、後者の代表的なものがTEDやappleの新製品発表会の場などで使われるスライドです。見ている人に力強いメッセージを発し、感動を与えるようなプレゼンが行なわれています。最後は観客からの大きな拍手で終わっています。

 では、公務員が行うプレゼンでは、どちらが良いのでしょうか? 前者は政府の資料に多いと述べたので、やはり前者の方が多く使われると思います。しかし、それらは「プレゼン」というよりも「説明」のために使うことが多いからです。国の予算や法律、政策の説明、あるいは基本的な情報提供の題材として使われています。そのため、説明会などの資料として使われることが多く、説明会の場だけでなく持ち帰って関係者と情報を共有することが求められているので、スライドにあらゆる情報を網羅しなければならないのです。そのため、文字を小さくして多少見にくくなることはやむを得ないでしょう。それにしても、膨大な情報量をスライドに見やすく示す技術は素晴らしいと感嘆します。

 ※こうしたスライドがあると、プレゼンテーションを聞かなくてもよくなってしまうため聴衆の聞く姿勢が削がれるというリスクもあります。

 では、後者のようなスライドは使わないのでしょうか? 私は決してそんなことはないと思います。これからの公務員は自ら新しい政策を積極的に打ち出していかなければなりません。そのためには、提案する政策の必要性をトップに訴える力が公務員に求められてきます。小さい文字で膨大な情報を盛り込むのではなく、力強いメッセージを伝えることも必要になるのです。そこで、 TEDやappleの新製品発表会の場などで使われるスライドも作れるようになる必要が出てきます。

 ※こうしたスライドの場合、スライドだけを見ても何が言いたいのかが想像できないため、聴衆はプレゼンターの話に耳を傾けなければならない状態になります。それがメッセージを伝える際にもプラスになっているようです。

 もちろん、メッセージ性の強いスライドだけで政策の提案をすることは難しいでしょう。 政策の背景や現状分析、効果などをデータに基づいて示したうえで、必要な政策を訴えなければなりません。

 そこで、公務員のプレゼンには前者と後者のスタイルをうまく組み合わせることが必要です。事実として伝えなければならないことは 前者のスライドを作成し、最も力を入れたい政策提言には後者のスライドを作成し、メリハリをつけることになります。言うは易し…なのですが、実践するのは決して容易ではありません。普段の説明スタイルに慣れている状況では、メッセージを伝える際にインパクトが生まれません。メッセージを伝えるためには、話し方にもインパクトを与える技術が同時に必要になってきます。

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