水曜コラム「公務員の学び」第30回:大学との共同研究のススメ

 今回まで「公務員の学び」と」題して30本のコラムを書いてきました。このコラムはいったん今回で閉じることにして、来週からは「今週前半のニュース」と題して書いていきたいと思います。本コラムの再開の予定は今のところありませんが、だとすれば今回が一応最終回となります。そこで、最終回にふさわしいテーマかどうかわかりませんが、今回は「公務員本人が学ぶ」ということから外れて「大学と共に学ぶ」ことのススメを述べてみたいと思います。端的に言えば、大学との共同研究です。

 何らかの政策を企画立案する時、多くの地方自治体はコンサルティング企業に委託しています。私が公務員だった頃、そうした委託を何度か行いました。情報収集や調整等に手間がかかってしまうような場合や専門的な知見を得たい場合など、コンサルティング企業は実にさまざまなニーズに応えてくれます。

 しかし、一方で課題もあります。第1に、お金がかかることです。もちろんコンサルティング企業として申し分ない成果を提示してくれるのですが、予算も相当かかります。数十万円単位の小さなものから、数千万円単位の超高額に及ぶこともあります。もちろん、大がかりな調査や設計などが必要な場合はお金をかけるべきなのですが、徐々に自治体の財政も厳しくなっています。また、職員が自前で調査してコスト縮減を図ることもできますが、有能な職員の育成にも時間とお金がかかってしまいます。

 第2に、お金が外部に流出することです。大手コンサルティング企業は東京や大阪などの大都市に拠点を構えています。そのため、委託料を支出する段階で地域外の企業に支出することになり、地域内での経済循環から漏れてしまうのです。もちろん地域経済全体の規模からみれば小さいかもしれませんが、計画策定を国から求められる機会も増えているので、あまりに多くなると無視することはできません。地方創生では人口ビジョンや総合戦略を策定する際に国から交付金が出ているのですが、せっかく地方の活性化を図るための計画づくりを大都市圏のコンサルティング企業に委託し、交付金が地方から流出して趣旨が活かされていないとの指摘も出ています。

 このような事情を踏まえると、コンサルティング企業の役割は引き続き重要ではありますが、どうしても必要な部分に絞りこまざるを得ないのではないかと考えます。そこで、自前での計画策定などを進めていかなければならないのですが、職員の育成にも限界があります。そこで、大学の活用が考えられるのではないでしょうか。

 大学が少子化の影響で競争が激しくなっており、存在意義も問われるようになっています。地方間の大学は社会貢献を前面に打ち出し、地域のなかで存在感を高めることで生き残りを図っていこうとしています。もちろん、大学生に限らず社会人の再教育なども重要で、大学院に社会人コースを設けるところもあります。

 つまり、大学は地域の政策づくりと職員の人材育成に大きな役割を果たせるのではないでしょうか。もちろん大学はコンサルティング企業の代替というわけではありません。大学としても単なるコスト縮減の手段となることは本筋ではないと思います。むしろ、アカデミックな性質を前面に打ち出しながら、地域に根づいた機関として役割を発揮するのではないかと思います。

 大学に委託するという方法もありますが、それよりも共同研究という形が望ましいです。大学側は教員つまり学識経験者のチームで政策に関わるとともに、地域に係る様々な現場の情報を得ることができます。一方、自治体側は職員の育成(大学教員の指導も含めて)を行うことができるのです。コストの面でも、大学側も利潤よりも社会貢献や知的財産の獲得、研究の活性化を重視するので、低く抑えることができるのではないかと思います。

 今後、公務員が学ぶ機会として、大学院で学ぶという事だけでなくこうした共同研究を通じて行うことも、十分に意味のあることではないかと思います。

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