金曜コラム「文章、プレゼンの 基礎」第16回:筋を通しながら、なおかつ分割する

 私が所属している東洋大学の講義も秋学期が終わり、期末のレポートを採点しているところですが、レポートや論文で特に気を付けたい点を1つ述べたいと思います。

 それは、表題のように「筋を通しながら、なおかつ分割する」ということです。

 レポートでも論文でも「自由に書きなさい」というテーマほど難しいことが多いです。なぜならば、何を書くかについても自分で決めなくてはないからです。「自由に書く」ということは「好き勝手に書く」ということではありません。テーマは自分で自由に決められても、テーマに関する意見を述べるための手順や要件を満たす必要があり、それも自分で決める必要があるからです。

 逆に、テーマが細かく設定されているほど書きやすいです。指示が手順や要件を表しているので、それに従って書き進めていけばよいからです。細かい設定は、ガイドになっているのです。

 ただ、細かいテーマであるからこそ、ガイドに沿った内容にしなければなりませんし、何よりもレポートや論文としての一貫性が必要になります。これがうまくいかないと、かえって内容がバラバラになってしまうので、注意しなければなりません。

 例えば、「今の試験制度で公務員にふさわしい人材を採用できるか」というテーマのレポートが出たとしましょう。これだけならばシンプルなので、自由に書けます(つまり、難しいです)。そこで、次のように細かく指定されている(=ガイドがある)としましょう。


①公務員試験の全体像を説明しなさい
②どのような人材が公務員にふさしいかを説明しなさい
③公務員試験の科目と人材との関係を考察しなさい
④今の試験制度で公務員にふさわしい人材を採用できるか、上記を踏まえて述べなさい

 このように細かく分類されれば、①から④の順に書き進めていけばよいので、ガイドがある分、易しいテーマになると思います。

 しかし、誰でも分かりますように、最も重要なのは④です。ですから、①から③は④の結論を導くための材料であり、④とのつながりを無視して書くことはできません。これを無視してしまうと、かえって議論がバラバラになってしまい、レポートの質が大きく下がってしまうのです。

 なお、④は「クローズド・クエスチョン」つまりイエスかノーで意見を述べるもので、どちらかが正解(=他方が不正解)というものではないと思います。問題は、意見がイエスかノーかではなく、自分の意見を読み手に説得できているかどうかで、それが①から③に盛り込まれていなければならないのです。したがって、①から③を書く時は、すでに④でイエスと言うのかノーと言うのかが決まっていないとレポートとして成立しません。

 ④がイエスなら、①から③もイエスの根拠として、④がノーなら①から③もノーの根拠として書くことになります。しかし、例えば①がイエス、②がノー、③がイエスの根拠になるような形で書いてしまうと、結局何が言いたいのかが分からなくなってしまいます。これでは、せっかく易しいテーマにしたつもりが、かえって読みにくいレポートになってしまうことになります。

 「筋を通しながら、なおかつ分割する」ということは、自由な(=難しい)テーマで書く時も重要ですが、あらかじめ分割されている(=易しい)場合でも、「筋を通す」ことをまず考えなければならない、という点で、やはり重要です。

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