水曜コラム「今週前半のニュース」第15回:マイクロツーリズムの大きな可能性

 今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

「観光は近場で」強まる 東北宿泊者、圏内からが11%増 20年7~12月

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 地元の魅力を地元の人が知ることで発信力が高まれば、域外の人々にも魅力が伝わり来訪者数増加をもたらすのではないか。

 新型コロナウイルスの影響でインバウンドをはじめ、観光業への影響は甚大なものがあります 宿泊や運輸・飲食など観光に関連する業種で多くが廃業を余儀なくされています。大きな期待を寄せていた東京オリンピックも延期され、海外からの応援を受け入れないこととなりました。

 今回紹介する記事は、厳しい状況にある観光関連業に新たな一歩をもたらす可能性が、新型コロナによって出ていることを示唆すると思います。それは「マイクロツーリズム」と呼ばれる近場の観光需要が増えていることによるものです。

 マイクロツーリズムの広がりは、単に落ち込んだ観光需要を補うといった量的なものばかりではありません。地方圏の観光振興を見ていると、行政機関や観光業界からの発信は強力になされているものの、住民目線で住民の生活感情から発信されているものは必ずしも多くないと思います。つまり本当に外部の人に魅力を感じてもらえるか、地元の人が確信を持たないまま、表層的な観光の魅力が伝えられているのではないかと思うのです。

 よく、地元のタクシーに乗って運転手さんに「どこかおいしいものが食べられる店はありますか?」「どこか行った方が良い所はありますか?」などと聞くと「この辺は何もないよ」という答えが返ってくる経験を持っている人は多いでしょう。あるいは「地元には自慢できるものがない」と思っている人も多いと思います。自分たちが当たり前のように感じていることに魅力を感じないのはやむを得ないのかもしれません。しかし、それが観光の魅力発信を妨げる一因になっていると思います。

 地元の魅力をより強力に発信するためには、地元の方々の実感に基づいた魅力でなければならないと思います。マイクロツーリズムは、これまであまり意識してこなかった地元の魅力に改めて触れることで、発信の強い原動力になるものと期待しています。新型コロナ対応としてやむを得ず経験することになったマイクロツーリズムが、コロナ以降の観光に新たな1ページを刻んでくれることを期待したいと思います。

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