土曜コラム「今週後半のニュース」第45回:国家公務員離れがさらに進む事態にどう対処すべきか
今週の後半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
「公務員離れ」深刻化…「キャリア」試験申込者、14・5%減の1万4310人
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
人材確保に支障が出てくる恐れ。働き方とともに試験制度の見直しを通じて、人材確保に努める必要がある。
記事によると、国家公務員総合職の申し込み数が5年連続で減少し、しかも減少率が14.5%と過去最大になった、ということです。これほどまで申し込みが激減していることに強い危機感を覚えます。
また、例年報道されていますが、東京大学からの総合職合格者数も減少しています。もちろん東大だけが優秀ということではありませんし、多様な大学から人材が集まるのは好ましい傾向です。しかし、かつて官僚養成機関とも言われた東京大学の学生にとって、公務員の人気が低下していることは、その存在意義にかかる課題とも言えます。
かつて、東大に入ると自然に官僚を志す雰囲気があったのではないかと思います。しかし、それは昔の話で、今はコンサルティングの人気が高いようです。
記事によると、「長時間勤務の過酷さや働き方改革が進んでいないなどのイメージで「公務員離れ」が広がっていることが要因」とされています。確かに今年の激減には当てはまるかもしれません。378時間の残業など、およそ尋常とは言えない公務員の長時間残業が注目されたことなどが大きいと思います。
ただ、減少は5年連続となっていて、他にもさまざまな要因が考えられます。
私が問題だと思うのは「やりがい」です。国家公務員総合職へのモチベーションは、「この国を少しでも良くしたい」という熱い気持ち、使命感だと思います。しかし、その気持ちが折れてしまうようなことが起きているわけです(すみませんが、言及は避けます)。そのため、「いったい何のために仕事をしているのか」という疑問が生まれているのではないでしょうか。
かつての官僚は、残業をまったく厭わず昼夜仕事をこなすスーパーマンが昇進していったようです。やりがいのある仕事ならは、残業どころか人生をかける価値がある、ということでしょう。今はそうした人材が幹部になっていると想像します。そのような働き方を是とし、それに惚れ込む若手もいると思います。しかし、そうした気持ちが折れてしまっては、残業は短くてもしたくなくなるものです(仕事を辞めたいとさえ思うでしょう)。私は長時間残業そのものよりも、仕事の内容、やりがいが変わってきていることが根底にあると思います。
今年の激減は、それに加えて尋常でない残業時間が報道されたことで公務員離れに拍車がかかっているのではないでしょうか。
公務員にとって、仕事のやりがいとは何か。私も元地方公務員として、そして大学の教員として、学生の希望に応える立場にあります。公務員のやりがいについて、立て直しが必要な時期に来ていると感じています。自分なりに考えら続けていきたいと思います。
試験制度の見直しも必要かもしれません。仕事に必要な知識やノウハウに絞って、より実践的な試験制度にしてはどうか、とも感じます。幅広い科目を受験勉強さながらに勉強しなければならないのですが、それが仕事にどう結びつくのか、なかなかイメージがつきません。仕事の現場を踏まえた試験制度を導入していくことも今後の検討課題ではないかと思います。