土曜コラム「今週後半のニュース」第46回:租税特別措置の弊害と今後を考える

今週の後半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

政策減税の「恩恵」、自民党献金の多い業種ほど手厚く 本紙調査で判明

租税特別措置は、課税の原則に大きな影響を与えます。そのため、原則としてはできる限り設けない方が良いとされます。

たとえば、公平性を損なう場合があります。特定の業種を優遇すれば、他の業種との公平性が問われるからです。もちろん、経済政策のうえで戦略的な育成が
必要な場合や過剰な負担を課してしまう場合には、特別措置によって公平性を図ることができます。

しかし、優遇される業種は大きなメリットを受けるので、過度に優遇されて公平性が損なわれても異議を述べることはないでしょう。逆に、他の業種は「あの業種だけでなく自分たちも優遇してほしい」ということになり、必要性が置き去りにされたまま租税特別措置が乱立するような事態になってしまうかもしれません。

そうなると、もう1つの課税の原則「簡素」にも当然影響を及ぼします。分かりやすい方が良いのは、課税する側もされる側も同じです。携帯電話の料金が分かりにくいと言われていましたが、租税特別措置もさまざまな特典が付くと分かりにくくなります。

さらに、コメントには書きませんでしたが「中立」の原則にも影響があるでしょう。市場の機能による経済活動に歪みが生じるような税制は、決して好ましくありません。

今回取りあげた記事は、そのような租税特別措置が政党への献金に連動していた、ということです。「献金が多い業界ほど、租特による減税の恩恵を受けている傾向が浮かび上がる」と分析されています。つまり、この記事が正しければ租税特別措置が課税の原則とは異なる政党への貢献によって判断されていたことになります。租税特別措置で歪められていたのは課税の原則だけではなく健全な政治だった、とも言えるかもしれません。

また、国民は消費税率の引き上げで負担が増えています。法人への課税は国際間の競争で引き下げられて負担が減っているのに租税特別措置で特定の業種がますます優遇され、その一方で国民の負担が増えている、ということであれば国民の不満も高まってしまうでしょう。

以上から、租税特別措置はできる限り抑制すべきだ、という意見は、ますます重要になります。どのような仕組みで実現するのか、国民全体での議論を踏まえて強力な措置が求められると思います。

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