金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第29回:自分の意見に迷っている方は、文献に意見を言わせてみよう
論文やプレゼンテーションで自分の意見を述べる時に、「どのような意見を述べて良いかが分からない」と悩む学生が多くいます。
本来ならば、テーマを決めた時におおよその意見のイメージ(仮説)ができていて、それから情報や文献を読むなかで意見が固まってくるわけです。さまざまな情報や文献に接し、それらに対する自分の反応の蓄積が意見に結集されます。
例えば、文献を読んでいると、「この部分は著者の主張に納得できる」と感じる一方で、「こっちは納得できない、違う意見だ」と感じることもあるでしょう。さまざまな意見に対して自分なりに「賛成」「反対」などに分類し整理していくと、自分の意見がどのようなものかが明確になってきます。
しかし、大学に入ってすぐの段階では、なかなかこれができません。高校までは「教科書に書いてあることが正解」という勉強スタイルのため、文献を読んで「賛成」と思うことは多くても「反対」と思うことが少ない、ということになりがちです。何を読んでも「正しい意見だと思う」という状態になってしまうのです。
もちろん心の底から読んだもの全部に賛成することもあるかもしれませんが、それでは他人の意見をそのまま述べただけなのでオリジナリティに欠けてしまいます。こうしたなかで、何とか「反対」を拾い出すことはできないものでしょうか。
私は、「文献に意見を言わせる」ということをオススメしたいと思います。これは、賛否両論のあるテーマほど有効です。つまり、自分が考えるテーマに関して「賛成」の文献と「反対」の文献を読み比べてみるのです。賛成意見の文献にはその根拠や反対意見への批判が書かれていることでしょう。逆に、反対意見の文献にはその根拠や賛成意見への批判が書かれていると思います。両者を比較してみて、自分がどちらの立場に近いのかを考えてみると、自分の意見が見えてきます。
なかなか自分で「賛成」「反対」を決めきれない人は、他人の書いた文献からそれぞれの立場を知ることで、無理なく自分の考えを確認することができます。
大学生になったばかりで文献から自分の意見を導くのに苦労する場合は、賛否両論のあるテーマを選び、それぞれの立場の文献を読み比べてみることで、自分の意見を導きやすくなると思うので、試してみてはいかがでしょうか。