連載企画:リアル体験!地方公務員の仕事紹介「年度末に退職職員を見送る時 」

 年度末を迎えました。地方公務員でも人事異動があり、今の所属が変わるのか続くのか、ドキドキして結果(異動の内示)を待っていることと思います。同時に、退職する人にとっては、仕事から退くまでのカウントダウンも、残りわずかという状況です。

 退職する職員には、定年を迎える人もいれば定年の少し前に退職する人、次の仕事に移る(転職する)人、家庭の事情などでフルタイムの仕事を離れる人など、さまざまな形があります。多いのは定年退職で、日頃からコミュニケーションをしていれば誰が定年退職を迎えるのかは予測できますが、そうでない場合は退職者として内示が出されると驚きます。

 私も地方公務員は36歳で退職したので、周囲には驚かれました。もちろん所属部署の皆さんには事前に伝えてありましたが、こうした人事情報は軽々しく外に漏らすことを控えなければなりませんので、多くの人は知りません。なので、内示が出た時に、「何かあったの?」と聞かれたことを思い出します。

 そして、いよいよ3月31日。最後の出勤日です。退職者には辞令が交付され、正式に退職となります。辞令を受け取った後、所属部署や関係者に挨拶と御礼を述べに歩き回っていきます(あくまで私の経験なので、自治体によって異なるかもしれません)。挨拶を終えて去る時に個々に声をかけていただくとこともありましたし、声を詰まらせて別れを惜しむ場面も見られました。

 見送る側の職員も、退職者が挨拶に来ると分かっているので、なるべく自分の席を離れず挨拶を受ける形になります。もちろん、公私ともに付き合いの深い人もいれば仕事だけのコミュニケーションだった人、話したこともない人もいるので、送り方は人それぞれです。私も、やはり期待している若手職員には励ますような言葉をかけた記憶があります。記念写真を撮ることもあり、今でも宝物です。

 そして、終業のチャイムが鳴ると、帰宅となります。私が勤めていた自治体では、1階のロビーに職員が集まって、退職者を拍手で送る慣例のようなものがありました。私が就職した時はなかったのですが、退職した時にはありました。退職者はほぼ全員、花束を持っているので、すぐに見分けがつきます。ロビーで大きな拍手に包まれ、退職者は手を振ったりお辞儀をしたりしながら、玄関を出ていくことになります。見送る側も見送られる側にとっても、感慨深いものです。玄関付近に市長さんがいて、握手をしてくれたので、「温かい職場に恵まれて良かった」と感じます。

 私も退職した時に見送っていただきましたし、退職後たまたま3月31日に用事でお伺いした際に、その年度末の退職者を見送る場に遭遇し、職員の皆さんと一緒に見送りました。市役所のロビーは住民票の手続きなどで多くの市民も訪れていたと思いますので、雰囲気につられて拍手を送った方も多いと思います。なんだか心が温まる話です。

 見送られるスタイルはいろいろあると思いますし、なかなか経験できる機会は少ないのですが、見送る側にとっても「自分はどういう形でこの仕事を終えたいか」を考える絶好の機会になります。拍手で送ってくれるだろうか、笑顔で挨拶できるだろうか、そのために今からできることは何か、など、退職の風景から考えることも大切だと思います。

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