火曜コラム「オススメ書籍」第42回:野口悠紀雄著「AI時代の超発想法」PHPビジネス新書、2019年
本書のタイトルから、AIが発想に革命を起こすことが書いてあるとイメージしますが、決してそうではありません。むしろ、AI時代であっても発想法そのものに大きな変化があるわけではなく、補助的にAIを活用することで発想の効率を多少高められるかもしれない、と感じました。
まず、「学生らしい自由な発想を期待します」という声を私はよく聞きますが、基本的な知識がないままで適当に考えても有益な発想が出てくるとは限りません(もちろん、素晴らしい発想をする学生もいますが)。しっかりと知識と問題意識を持ち、なおかつ若い人の価値観や生活環境を踏まえて発想しなければなりません。本書では「頭の中に知識が詰まっていなければ発想はできない」と述べていますが、まさにそのとおりだと思います。
それを象徴的に表すキーワードが「創造的模倣」ということです。これは、最初は模倣から始まり、徐々に模倣を脱して創造に至るというものです。確かに、発想はゼロから生まれるものではありません。「自由な発想」はありえないのです。したがって、最初は模倣です。
しかし、それで終わるのでは単なる模倣に過ぎません。そこに新たな要素を加えて創造へと至るのです。新たな要素もまた、模倣でも良いと思います。組み合わせが新しければ、結果として生まれるものは創造的要素を持っていると言えます。「創造的模倣」というキーワードが、相反する言葉の組み合わせで目新しいと感じました。
本書は、特に学生の皆さんに有益な本ではないかと思います。「考える」
という作業は、これから出ていく社会で常に求められることです。もちろん「実行する」ことが続くのですが、考えた内容に問題があれば実行しても意味はありませんし、実行しながら試行錯誤によってアップデートしていくものなので、実行と同時に考えることが必要です。発想法は、社会で求められる重要な資質であるとともに、タイトルのとおり「AI時代」を迎える学生に必須の具体的な方法が盛り込まれています。
著者は類似のテーマについて多くの書籍を出版していますが、本書は若い人にとって優先度の高い本だと