水曜コラム「今週前半のニュース」第14回:東京からの移住先は東京?
今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。
東京都民が移住したいと思う全国のエリアランキング、3位石狩、2位鎌倉・三浦、1位は?
このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。
移住促進の背景は東京一極集中の緩和だが、この結果を見る限り移住促進が新たな東京一極集中をもたらす可能性も感じられる。
この記事は、東京都民でニ拠点居住をすることに関心のある人が居住したいエリアをランキング化したものです。二拠点居住とは聞き慣れない言葉ですが、通常の居住地にもう1つ拠点を加え、2つの拠点に居住することを表しています。例えば、私は福井県から東京都に引っ越してきましたので二拠点居住ではありませんが、東京に拠点を置きながら福井にも拠点を残して定期的に福井の仕事のために通うような形にすれば二拠点居住になります。あるいは、平日は首都圏で仕事をして週末になると地方でゆっくりと過ごすようなことも二拠点居住と言えるでしょう。二拠点居住が広がれば、定住人口が増えなくても2つ目の拠点として地方で暮らす人が 増える可能性があるので、地方にとっては好ましい状況になると思います。特に、東京都民のもう1つの拠点は、日ごろの喧騒から離れたいというニーズがあると思われるので、多くの地方が第2の拠点になることを期待できます。
この記事から分かるのは、その期待が必ずしも妥当ではないかもしれない、ということです。上位10エリアのうち東京都・神奈川県・埼玉県のエリアが4つランクインしています。特に、八王子・奥多摩エリアは東京都内です。つまり、東京都民が都内にもう1つの拠点を求めていることになるわけです。
「東京一極集中」という言葉には神奈川県や埼玉県も東京に含まれているでしょうから、第2の拠点も東京一極集中の状態と言えるかもしれません。なお、上位20エリアでみれば埼玉県も含めて7エリアがランクインすることになります。さらに、もう少し広げて山梨県・静岡県・長野県・茨城県まで含めれば、上位20エリアには 13エリアに拡大します。これらの県は東京圏への流出も見られるので「東京一極集中」には含まれないかもしれませんが、第二の拠点として東京近郊が過半数に達するということは言えると思います。
このように考えると、二拠点居住が広がれば東京一極中集中が是正されるという期待は必ずしも妥当なものではありません。むしろ東京圏内や近郊への二拠点居住が普及することになれば、ますます東京一極集中になる、と言うこともできるかもしれません。東京一極集中という言葉の定義が確立されていないので議論はいろいろあると思いますが、いずれにしても東京というエリアの底知れぬ吸収力に改めて驚愕するばかりです。