土曜コラム「今週のニュース」第12回:行政への手続きが煩雑で時間がかかる理由は?
今週も多くの記事をとりあげてコメントしたが、今回は次の記事について掘り下げてみることにしたい。
持続化給付金 大学生グループが不正受給か ネットで詐取指南「簡単に手に入る」
このニュースに関して、私は以下のようにコメントした。
こうしたことが起こると、手続きの簡素化ができなくなる。もちろん、学生の将来にも大きく影響する。
後段の意見は学生の皆さん自身の方がよく分かると思うので、前半の内容についてコメントを加えたい。
記事のような不正を企む人はごく限られるだろうが、それを防ぐためにややこしい手続きが取られているケースが多い。
国や自治体からの支援などを受ける際、「手続きが煩雑」とか「手続きに時間がかかる」といった批判が多く見られる。特に、今回の新型コロナ対応では、こうした批判が制度の多くで見られた。今回は緊急措置であったことや、大半の国民・企業が対象となったことで、可能な限り簡素化しようとしたのであろう。しかし、それゆえに制度の抜け穴が不正の要因になってしまう。
不正とまではいかなくても、手続きが煩雑なのは間違いを防ぐためでもある。例えば、選挙では1人1票の投票用紙が絶対に交付されるよう、何重ものチェックをかける。本人に悪意はなくても、もし勘違いで人が2度目の投票に来て、職員のチェックを抜けて再び投票用紙を渡してしまえば、1人で2票入れることになる。投票箱に入ったら、取り返しがつかなくなる。こうしたことを防ぐためにも、チェックは厳重に行われる。
また、納税でも大半の人は期限内に納付する。しかし、ごく一部の人は納付を忘れたり納付しなかったりする。そうした一部の人々のために、何人もの職員が納税促進の業務をするのである。
こうした仕事は、多くの人には関係ない。不正をせずに正しく手続きする人、正しく1票を投票する人、期限内に納税する人が大半で、そうした人には「手続きが煩雑」「無駄な仕事」が多いように思われるだろう。しかし、ごく一部の人のためにそのような状態になっているのである。
もちろん、間違いは誰にでもある。私も注意せずに申請書などに記入すると、住所の欄に氏名を書いてしまうことはある。その時は、担当の方に教えてもらって、書き直す。だから、「ごく一部の人」になる可能性は、誰にでもあると言える。
おそらく、すべての人々が正しく手続きしてくれれば、手続きはもっと簡単で迅速に行えるだろう。しかし、それを人間に求めることは難しい(せいぜい注意深くすることしかできず、完全に正しくすることはできない)。機械に頼るしかない。機械は確かに正確だから、間違えた場合は瞬時に指摘してくれる。しかし、今度はプライバシーや国民監視の問題が懸念される。
結局のところ、国民がどちらかを受け入れるしかない。つまり、プライバシーを守って煩雑な手続きを受け入れるか、手続きを簡素化して機械化を受け入れるか、いずれかである。個人的には、後者の方が時代に即しているのではないか、と考える。