水曜コラム「公務員の学び」第15回:本はインテリア-もう1つの「積ん読」のススメ

 今回は本を読むことそのものではありませんが、本を読まずに置いておくことにも効果があることを述べたいと思います。

 本を読まずに置いておくことは、「積ん読」とも呼ばれています。積んでおくと「いつか読まなければ・・・」というプレッシャーになるので、それを利用して読書を促す効果があるので(読まないからいけない、ということではなく)推奨されています。確かに、そうした効果もあると思いますが、私は別の効果をここで述べます。

 それは、「本はインテリアである」ということです。私の恩師の言葉として記憶に残っています(かなり以前の記憶なので、定かではありませんが・・・)。私が大学院生の時は、指導教官の研究室でゼミが行われました。研究室がかなり広かったので、10人くらいのゼミ生は余裕で入れました。研究室には、多数の書籍が整然と並んでいます。洋書や箱に入ったハードカバーの本など、私たちがよく行く書店とも違って、厳粛な近寄り難い雰囲気があります。

 ゼミが終わってから先生に、「すごい本が並んでますね。全部読むのは大変だったのではないですか?」と聞いたところ、先生は「さすがに全部は読めないよ。インテリアだね」と仰るのです。最初はよく分からなかったのですが、ゼミを重ねていくうちに、本が研究室の雰囲気を創り、ゼミの緊張感も生んでいることを感じました。まさに、本がインテリアとなっているのです。

 図書館にも同じような雰囲気があります。特に、「〇〇先生文庫」などのようなコーナーは、その先生の蔵書を図書館に寄贈してもらうのですが、まるでその先生の研究室にいるような雰囲気を感じます。図書館のコーナーなのですが、そこに来るだけで緊張感が伝わり、自分が励まされているような感覚になります。まさに「パワースポット」です。

 その後、私が大学教員になってから、同じことを実践しています。恩師の先生が書かれた本はデスクの近くに並べています。すると、先生から励まされているような感覚になり、仕事が進みます。また、雰囲気のある書籍はその隣にまとめて並べ、来客があった時に私がその本の前に座る形にしているので、お客さんから見れば私の後ろに雰囲気のある本が並んでいることになります。すると、何となく私の印象も変わるようです。たまに取材などを受けるのですが、その時にも同じような構図で撮影して、研究者の印象が強まっているようです。

 その他の本は、テーマごとに並べていますが、いただいた本なども多く、また一度読んだだけの本などもありますので、すべてを把握しているわけではありません。いつか読みたい本もありますが、もう読まない本もあります。

 今は私が研究室で学生との面談などを行いますが、学生は開口一番「すごくたくさんの本がありますね」と言われます。もともと収集癖もあるので集めること自体が好きだったのですが、やはり恩師の言葉(私の記憶?)があったから集まったのではないかと思います。ただ、学生には「これ全部読んでるんですか?すごいですね!」とも言われるのですが、全部読んでいるわけではないと正直に言っています。

 いずれにしても、本は読むことだけでなく、「積ん読」にも効果があり、それは「インテリア」としての役割も見逃せないものがある、ということです。

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