火曜コラム「オススメ書籍」第29回:マンキュー「経済学Ⅰミクロ編」
今や学生の定番として定着している経済学のテキストブックです。700ページにわたる大著で、読むのに時間と根気を必要としますが、とても分かりやすい内容で「さすが定番テキスト!」た感嘆しました。
経済学のテキストは、数式をどこまで示すかが難易度に大きく関わってきます。数学な苦手な学生が経済学を学ぶ際、数式が並んでいるだけでアレルギー反応のような拒絶反応が出ます。しかし、逆に数学の得意な学生は、数式で説明してくれた方がスッキリするのです。この正反対とも言える反応に、テキストがどう対応するかがポイントになります。
本書では、数式はまったくと言ってよいほどありません。したがって、数学が苦手な学生にうってつけだと思います。その分、説明はやや冗長なところもありますが、初学者には経済学のイメージを刷り込むのにこのくらいあった方が良いかもしれません。
図表の中にも本文と同じくらい丁寧な解説があります。経済学はグラフを使うことが多く、さすがに定番テキストでも図表は欠かせないのですが、グラフの説明を本文だけではなくグラフの中でも丁寧にしているので、分かりにくいところをできるだけ減らそうとしている配慮を感じます。これもうれしいポイントです。
また、具体例もたくさん盛り込まれています。著者はアメリカの経済学者ですが、日本語訳には日本の事例が加えられていて、私たちにも身近な内容が入っています。これも素晴らしい配慮です。
また、章ごとに要約と練習問題が掲載されています。おおまかな内容をサッと知りたい場合や、定着度を把握したい場合には有益です。特に、練習問題は他のテキストを圧倒する充実ぶりです。難易度もそれほど高くはないので、確実な定着と自信がつくのではないかと思います。
一方で、発展的な内容は必ずしも多くありません。あくまでも入門編といったところで、経済学をもっと専門的に学びたい学生には次のステップが必須になります。場合によっては、中級編のテキストも読んだ方が良いかもしれません。
また、やはりボリュームが大きいので根気が必要です。いくら易しいといっても初学者には把握しづらい部分もあると思います。辛い思いをしながら700ページを読破するのは、やはり大変ではないでしょうか。途中で何度か挫折するかもしれませんが、辛抱強く、時間をかけて学んでいただきたいと思います。
しかし、そうした苦労があってこそ、その先には経済学に対する深い理解が確立されることは間違いないと思います。本書は、経済学を学びたい人向けのテキストブックとして、素晴らしいと思います。