公務員の仕事:男女共同参画の「難しさ」と「大切さ」

 私は現役の公務員時代に男女共同参画を担当したことはないが、最近はいろいろな形で関わっている。そうした中で、男女共同参画の「難しさ」と「大切さ」について、経験を踏まえて思ったことを述べる。

 男女共同参画社会の形成は、国・都道府県・市町村いずれも何らかの政策を行っている。

 例えば、「イクメン」などと言われているが、男女共同参画の政策としても、子育てに積極的に関わる男性を増やすために、男性の育児参加を促進する講習会などが行われている。また、「働き方改革」はどちらかと言えば経済面の政策であるが、男性の残業時間が減れば家庭で家事や育児などを行う時間が増えるので、男女共同参画社会の側面もある。

  他にも具体例はあるが、上記の取り組みからも想像できるように、男女共同参画社会の形成が特殊な難しさを持っている。と同時に、実はこれからの行政のあり方にとって大変重要な存在なのである。以下、詳しく説明したい。

 難しさとは、第1に、政策の中心が意識啓発ということである。他の政策分野のように、補助金を支給したり、国民・住民にサービスを直接提供するのがメインではない。例えば、子育て支援の中心は子どもにかかる医療費の補助や、保育園の運営などであろう。しかし、男女共同参画ではそれぞれの家庭に行政が直接入り込むことはできない。突然市役所の人が家に来て「今日は奥さんを休ませてください」と言われたら、きっと面食らうだろう。男性が自らイクメンになるよう、気持ちに訴えかけることしかできないのである。意識啓発で市民の行動につなげることは容易でない。

 ※ただし、国は法律を制定して労働時間に規制をかけたり、男性の育児休業を促進するための補助制度を創設したり、意識啓発にとどまらない政策も行っている。また、男女間や家庭内での暴力(DV)などから身を守るため、警察や児童相談所などが対応している。これは数少ないサービスの直接提供であろう。一方、市町村の場合は「こうした法律・制度ができましたよ」「DVの被害にはこうした対応がありますよ」といった広報が中心となる。

 第2の難しさは、政策のあらゆる分野に関わっていることである。男女共同参画社会を所管する部署は確かにある。つまり、「タテ割り行政」の一組織が政策を担っている。しかし、所管外の政策にも男女共同参画社会に関係するものはかなり多い。先に挙げた子育て支援を所管するのは、児童福祉の部署である。しかし、子育て支援は家庭での育児負担にも関係している。つまり、児童福祉の部署も男女共同参画社会の形成に影響しているのである。

  「タテ割り行政」では、他の部署が所管する政策になかなか口出しすることはできないが、男女共同参画に関してはそういうわけにはいかない。少しでも男女共同参画につながる政策をしてもらうよう、他の部署に要請する必要がある。タテ割り行政の中では、難しいことである。しかし、こうした難しさを克服する姿勢が、今後の行政のあり方全体にとって重要ではないだろうか。

 まず、男女共同参画に限らず、市民の行動を引き出すことはあらゆる分野で求められている。「市民協働」「新しい公共」など、行政だけが公共分野の担い手ではない。市民の行動を引き出すことが難しい男女共同参画社会の分野で成果が出れば、さまざまな分野に応用することで地域全体が市民協働で動いていくのではないか。

 また、タテ割り行政の中でも職員が広い視野を持って、所管外の分野も意識して仕事をすることが必要である。1つの政策でも効果を多方面に広げたり、似たような政策を統廃合して行政全体の効率性を高めることができるだろう。西尾勝氏は自治を担う人々に「公共意識」を持つよう述べているが、ここに民間企業にはない公務員の存在意義があるとも思う。

 残念ながら、男女共同参画社会の形成は国民・住民にはそれほど重視されていないようである。しかし、ここで述べたように実は大変重要な役割を持っていると私は思う。男女共同参画社会の形成は時間のかかる取り組みであるが、同じように時間をかけて本質的に重要な役割を果たしていってほしい。

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