木曜コラム「公務員の仕事」第6回-1年目からの成長:電話の受け答え

 私が市役所に入って最初に配属された住民税の業務は、5月までが1つのピークである。それは、以前も述べたように税金の納付書を一斉に送ることである。納付書の送付が終われば、課税に関する仕事は随時、税金の問い合わせがあったり、課税に関する国の統計資料作りを行ったり、仕事がないわけではないが内容が大きく変わり、少し落ち着いてくる。
 

 そこで、今日は1年目から少しずつできるようになってくることを述べたい。それは、電話の受け答えである。

 最初のうちは、本当に何もできない。かかってきた電話も受けるのが恐怖だし、市民からの問い合わせがあっても、税金のしくみも分かっていないので、答えられる知識がない。積極的に電話を受けて前向きな姿勢を見せるのも良いかもしれないが、受け答えを間違えるとかえって迷惑をかけることになるので、勢いだけに任せられない。これで給料をいただくことが申し訳ないくらい、最初は何もできず、とにかく自分で勉強したり先輩から教えてもらうしかない。

 そんななかで、最初にできるようになるのは、電話の応対である。ただし、内部(庁舎内の他の部署)からの電話(内線)なのか、住民からの電話(外線)なのかで、緊張感が大きく違ってくる。もちろん、後者の方が緊張する。ミスが許されないからである。内線であれば、上司・先輩や同僚からの電話なので、事務連絡が中心であり、多少のミスはカバーできる。

 幸い、私の勤めていた市役所は内線と外線の着信音に微妙な違いがあったので助かった。内線の場合は積極的に電話を取っていた(もちろん自分に用事がある電話かどうかわからず、ただつなぐだけの場合も多い)。外線の場合は、先輩に目線を送って「すみません」と心の中で思いながらスルーさせてもらっていた。それが、徐々にしばらくすれば、外線も受け取れるようになる(もちろん、先輩に近くにいてもらいたいと思いながらではあったが)。

 電話の応対は、4月の研修で教わっていた。最初は「はい、〇〇課です」と言って受ける(今は、それに続いて自分の名前を名乗るように言われているようだ)。そして、相手が名乗った時に「いつもお世話になっております」「こんにちは」と受けて、誰につなぐのか、どんな用件なのかを聞く。つなぐ人を指定されれば、すぐにかわってしまえば良い(「●●さん、〇〇社の□□さんからお電話です」などと言ってかわる。しかし、用件だけを言われた場合(「〇〇について聞きたいんですが…」など)、自分が明らかに担当でなけれ要件の担当の職員にかわればよいが、そうでない場合は自分がある程度話を聞いて、自分が応えられるかどうか考えなければならない(あまり聞かずに「〇〇さん、ちょっと良く分からない話なんですが…」などと言ってかわってしまうと、電話を受ける気がないと思われてしまう)。そのため、メモをしっかりとって、誰につなげるかを考え、その職員に相手の用件を正確に伝えなければならない。正確に伝えられなければ、かわってもらった職員が予想していなかった内容を市民から聞いて驚くかもしれないし、電話をかけた市民も同じ用件を話さなければならないので、二度手間になってしまう。だから、ある程度話を聞いて、担当と思われる人を自分で考えてかわってもらうのである(どの仕事を誰が担当しているかを、ある程度知っておかなければならない)。

 電話の受け答えも、意外と深いものである。

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