火曜コラム「オススメ書籍」第13回:中村英夫編著「インフラストラクチャー概論」日経BP社

 私たちの生活に欠かせないインフラ。ですが、今や人口減少時代に入っているなかで、かつて成長と生活利便性向上のために整備してきたインフラも大規模な老朽化が進行し、今後どのように維持していくかが課題になっています。そうした大きな変化の中で、インフラがこれまでどのような役割を果たしてきて、現在どのように維持・管理され、これからどのような方向をたどるべきかが本書で包括的に議論されています。


 「インフラ」と一口に言っても、実に幅広い範囲に及びます。家にいるときに使う上下水道やネット回線、移動するときに使う道路や鉄道、経済活動を支える港湾や工業団地、いざというときに命と財産を守ってくれる防災施設など、わたしたちの日常生活に直結するものから、普段は関わることがないものまで、さまざまなものがあります。しかし、いずれも不可欠なものです(もちろん、無駄使いと指摘されるものもありますが…)。


 そのため、インフラを所管するのは行政と考えがちですが、そうでもありません。行政であっても国と地方自治体で役割分担がありますし、民間企業が公益的見地から、あるいは利潤を追及するために運営するものもあります。また、行政が所管する場合であっても、実際の管理は民間企業が受託して行う場合もあり、その方法も新たなものが現在なお編み出されています。

 もちろん、インフラの性質によって適切な所管の主体があると思います。しかし、それぞれの歴史的経緯があるので、現状が望ましい形になっているとも限りません。また、海外でもインフラの整備や維持・管理の方法は国ごとに経緯や特徴があります。日本のケースが必ずしも普遍的とは限りません。


 さらに言えば、今後のインフラは海外展開の可能性も期待されています。私が関心を持っているエネルギー分野でも、海外の電源開発に関わることで開発援助やビジネスチャンスにつながると考えられます。

 本書は、400ページ超におよぶボリュームのある本ですが、上に述べた内容が盛り込まれていて、内容の広さと濃さからすれば大変コンパクトにまとまっている本だと思います。しかも、国内外の写真や図表も豊富に掲載され、平易な文章に加えてイメージもしやすい工夫がなされています。


 インフラを所管する国や地方自治体の職員だけでなく、建設会社の方などインフラに関係のあるすべての職員の方には必携ですし、さらにはインフラを利用する人が読んでも勉強になると思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です