木曜コラム(金曜日掲載)「公務員の仕事」第19回-地方自治体の長期計画

 これまでは、しばらく公務員のプライベートについて述べてきましたが、今回は公務員の仕事について少し踏み込んだ話をしたいと思います。

 それは、長期計画の策定です。地方自治体が進める政策は、長期計画に基づいて行われています。およそ10年程度の期間でどのようなことを行い、その結果としてどのようなまちをめざすのかを示すのが長期計画です。あらゆる分野について書かれているので、100ページを超えるボリュームのある冊子となります。

 私は、この長期計画の作成を市役所職員の時代に担当したことがあります。また、現在は外部の有識者(専門家)として計画の作成に関わっています。

 10年先のまちの姿を想像することは、変化がますます激しくなっている現在では、とても難しいことです。しかし、大小さまざまなプロジェクトを実施する際、10年どころか30年や50年という長期を見据えたビジョンに基づくことが求められています。しかも、人口の減少や予算規模の縮小などによって、財源の制約も厳しさを増しています。そうしたなかで、たとえ困難であっても深い洞察力に基づく将来構想を立てる必要があり、長期計画の重要性は今なお衰えていません

 長期計画を作る際、現在絶賛流行中とも言える「タテ割り」の問題があります。それぞれの部署は、与えられた使命に基づくプロジェクトを進めていますが、ヨコの連携は必ずしも十分とは言えません。多様なプロジェクトを別の部署が並行して行なっている「二重行政」のような状況も見受けられます。長期計画を担当する企画調整部門は、そうした二重行政を回避し、できるだけヨコの連携を確保して、効率的にプロジェクトを実施するよう計画を作成しています。

 なお、長期計画は地方行政の個別分野の単位でも作成されています。具体的には、環境・教育・高齢者福祉・子育て支援など、実に多様です。さらに、それらの分野別計画を1つにまとめた「総合計画」があり、私が関わってきたのも総合計画です。これは、自治体にとって最上位計画と言えるもので、他の計画は総合計画に即して作られる形になります。

 ある地域の計画の全体像を把握したい場合は、この総合計画を読むことが最適です。ホームページにも公開されていて手軽に入手できるので、オススメします。1つ踏み込んで述べるとすれば、完成した計画だけでなく完成する前、つまり審議のプロセスなども見ておくと、さらに理解が深まります。どのようなメンバーが審議に関わっているのか、当初はどのようなことが盛り込まれていたのか、審議のなかでどのような意見が出て、それが計画にどのように反映されたのか(または反映されていないのか)といったことが、プロセスを通じて把握することができるからです。すべての自治体がプロセスをホームページで公開しているとは限りませんが、公開している場合はこちらも見ておくと、さらに良いでしょう。

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