日曜コラム(月曜日掲載)「マイ・オピニオン」第19回:テレワークからノマドワークへ

 新型コロナウイルスの蔓延によって緊急事態宣言が発出された頃は、在宅勤務による外出自粛が要請され、一定の成果をあげました。最近では、新規感染者数が依然として多い地域もありますが、政府のgo toトラベルキャンペーンが全国に拡大されるなど、徐々に外出の促進が図られています。これから寒くなってくるとインフルエンザの蔓延も懸念されますが、現状では外出自粛が再び強化される雰囲気にはなっていません。今後、在宅勤務の頻度も減り、徐々に通勤の頻度も戻ってくるのではないかと考えています。

 しかし、今や「在宅での勤務か会社での勤務か」という二者択一ではなく、さまざまな勤務形態が提唱されています。例えば、「ワーケーション」という仕事(ワーク)と観光(バケーション)を組み合わせた形態があります。これまでは、観光のために休暇を取らなければなりませんでしたが、日中は観光地を楽しみ夕方から仕事をするなど(逆もありえます)、観光地に出かけて旅館などでテレワークをすることも可能です。

 また、郊外の駅周辺にサテライト(シェア)オフィスを設置し、会社に行かなくても自宅近くの駅で仕事ができる企業も出てきているようですし、さらに、駅の中に仕事用のブースを設けて、時間単位で使える取り組みも鉄道会社などで始まっているようです。このように自宅でなくても、そして会社でなくても、仕事ができる場所が多く生まれつつあります。

 いわば「どこでも仕事ができるようになる」ことになり、「ノマドワーク」とも呼ばれていました。「ノマド」とは遊牧民のことで、特定の仕事場を持つことなく働く形のことを表しています。具体的には、スターバックスなどの喫茶店でノートパソコンを駆使して仕事をするスタイルが注目されていて、主にフリーランスの働き方として紹介されていたように思います。

 出勤して勤務する頻度が減れば、あらゆる形でのテレワークが普及して、ノマドワークが広がってくるのではないかと思います。 私自身も自宅や職場はありますが出張の機会もそれなりにあるので、どこにいても同じ環境で仕事ができるように工夫をしています。

 そして、こうした働き方が多くの人にできるようになってくれば、居住の概念も大きく変わってくるかもしれません。 極端に言えば、自宅を持たなくても良いことになるからです。そうなると、人口の概念にも影響してくるでしょう。定住人口(地域に居住している人の数)や交流人口(地域に出かける人の数)に明確に区分することが難しくなり、新たに提唱されている関係人口(地域と何らかの関係を持つ人の数)に収斂していく可能性さえあります。

 テレワークの形が多様化してくることで、ノマドワークが改めて注目されるのではないか、それによって人口の概念が変わってくるのではないか、ということをふと考えた次第です。

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