土曜コラム「今週のニュース」第20回:政策はすべてのことに万能というわけではない?

 今週も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

 アベノマスク、首相周辺独走―コロナ対応で民間検証

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 興味深い調査と結果。政府の対応は重要だが、それだけで事態が変わるものではない、ということを知っておきたい。

 新型コロナウィルスの蔓延で、いろいろなことが目白押しに進められています。経済活動が大きな制約を受けたり、あるいは国民全員に10万円が支給されたり、現在はGoToキャンペーンで多くの人が外出を再開したり、支援策への詐欺や錬金術が問題になったり…、私たちは政策に抑えられ、振り回され、怒りや違和感を覚え、利用(悪用)もしています。そして、毎日新規感染者数や有名人の感染が大きく報道され、それに一喜一憂し、驚き、恐れているのです。

 今回取りあげたのは、こうした一連の動きについて民間の機関が検証を試みた結果の紹介記事です。タイトルには「泥縄の結果オーライ」とありますが、まさに対策が後手後手に回りながら、死者数などは世界的に低い水準に収まった、ということのようです。

 詳しくは記事や報告書(市販予定があるようです)を読んでいただきたいのですが、こうした記事をみると、「いったい政策はどこまでの力があるのか?」と考えてしまいます。例えば、選挙で政党や候補者がいろいろな公約を訴えていますが、「本当にできるのか」と疑問を感じることもあります。

 「経済の大幅な成長を実現します!」と言えば国民の多くは期待するでしょうが、経済活動の大半は民間企業によるもので、政策ができるのは後方支援でしょう。また、「東京一極集中を是正します!」と言えば地方の人々は期待すると思いますが、経済活動の結果として集中が起きているのであれば、それを是正すれば経済活動に影響が出ることにもなります。「やります!」と言っていることに対して、私たちは「本当にできるのか」と冷静に捉えることが必要でしょう。

 今回の新型コロナ対策は「結果オーライ」と評価されました。これは政策が良好な結果をもたらしたのではない、ということでしょう。このことが真実なのであれば、重要なのは私たちが「政策のおかげで成果が出た」と誤解しないことでしょう。そして、結果オーライを直に喜んでも良いのではないかと思います。

 つまり、私たちには「政策にできないことをできないと見抜くこと」が必要なのです。なぜかと言えば、このような誤解をしてしまうと、私たちが政策に何でも求めてしまうようになるからです。何か困ったことが起きた時に「それに対処するのは政策の役割である」ということになります。できないにもかかわらず求めれば、政治家は「できません」と正直に言っても落選してしまうだけです。それは、政治家に対しても酷なのではないかと思います。

 私も報告書をすべて読んだわけではないのですが、今回の記事は政策対応を批判するだけでなく、私たちが政策に何を求めるのかを考える題材としても重要ではないかと感じた次第です。

 

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