日曜コラム「マイ・オピニオン」第25回:地方行政の実務家による研究の意義とは?

 昨日から今日にかけて、私が所属している学会「地方行政実務学会」の第1回全国大会が開催されました。新型コロナウィルス蔓延の影響でオンラインでの開催となりましたが、設立されたばかりの学会の大会として素晴らしいスタートを切ったのではないかと思います(私は仕事の関係であまり力になっていないので偉そうなことは言えないのですが…)。

 この学会は、地方行政の実務家の方と、元実務家で現在は大学教員となった方で構成されています。私も今年で市役所に14年、大学も14年目を迎え、ちょうど同じキャリアとなりました。実務を離れて時間が経っていますが、現役の方々との交流を維持しつつ、大学の場で研究活動を行っています。

 大会では実務家の方々からの報告などをお聞かせいただきましたし、大学教員の方々からはアカデミックな見地での報告を聞くことができました。しかし、それは決して水と油のようなものではなく、勉強熱心な実務家の方々からもアカデミックな内容が十分に盛り込まれていますし、大学教員の方々からも象牙の塔にとどまることなく実務経験を踏まえた内容が発信されています。バランスの違いと言っても良いのではないかと思います。

 私は、実務家の頃は研究に関心があったわけではありません。しかし、仕事に一定の経験と責任が生まれてきた段階で大学院に派遣していただく機会を与えられ、学問(経済学)が仕事(地域の課題を政策で解決すること)に大きく役立つことを実感し、その後は自然に研究への熱が高まっていきました。しかも、あくまで仕事がベースであったので、実社会を離れたものではなく現実の課題解決という使命感を持ちながら研究ができたのではないかと思います。

 こうしたことは、地方行政にとって大変意義深いものであると思います。なぜならば、研究が研究で終わることなく、現実に活かすことができるからです。経済学にはさまざまな分野があり、視点も範囲も異なります。それぞれの分野にそれぞれの意義があると思いますが、現実の課題解決に活かせるものがあれば活かした方が良いことは間違いありません(「すぐに役に立たない」などと言われる基礎研究を否定するものではなく、活かせるものを活かさない手はない、ということです)。

 実務家は、ともすれば現実離れしかねないアカデミックな分野を現実の課題解決に活かす方策を導くことができる貴重な損Z内だと思います。実務家にはそうした血が流れているのです。学会を通じて、実務家の方々にはアカデミックな部分を、大学教員の方々には実務の部分を積極的に吸収し、両者の交流によって現実の課題解決のための研究が進むことを期待したいと思いますし、自分の可能な限り力になれればと考えています。

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