水曜コラム「今週前半のニュース」第13回:待機児童の自治体間比較から自治体の戦略を考える

 今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。


今春の保育園、入りやすかった自治体は? 全国に調査

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 1次選考の結果とはいえ、落選が多い自治体も散見される。賃貸住宅に暮らす方は子育て期間中の居住地選択に影響するかもしれない。

 待機児童ゼロをめざすことが子育て支援の最重要課題と考えられているなかで、今回のデータは大変興味深いです。

 特に都心部の場合、父母共働きで祖父母などと同居・近居でなければ子育ての機会が保育園次第ということになり、「保活」という言葉もあるように保育園に入れるかどうかが大変重要です。定員を上回る申し込みがあれば受け入れは不可能で、他の保育園を探すしかありません。

 今回のデータは一次選考での落選率が示されています。もちろん二次選考以降で保育園が決まれば待機とはなりませんが、居住地や勤務地などの条件があるので第一希望の保育園にできるかぎり多く入れることが望ましいはずです。大都市の場合、2~4割の落選率となっており、直感的には少し高い印象を持ちました。

 こうしたデータが出てくれば、「どの自治体だと希望が通りやすいか」が一目瞭然です。そのため、保育機会に恵まれた自治体で暮らしたい人も増えるのではないでしょうか。もちろん持ち家住宅の場合は転居も難しいでしょうが、賃貸住宅の場合は容易です。子育て世代のための、子育て期間中の賃貸住宅を供給することで、子育て世帯の流入が増えるのではないか、と考えられます。さらに、保育園にもブランドや評価があるので、そうした保育園を充実させることで他地域との差別化も図れるでしょう。

 ただし、子育て世帯の両親は20代から40代くらいでしょうから、必ずしも高所得者とは限りません。つまり、納税額はあまり多くないと思います。なおかつ、保育園や子どもの医療費支援など子育て支援の支出が増えれば財政負担が重くなる可能性もあります。

 そこで、毛尾属的に居住してもらえるよう、保育園の次の段階となる小中学校教育と持ち家住宅取得につなげるような施策も必要だと思います。所得水準が上がると住民税が増え、持ち家によって固定資産税が増えます。ここまでフォローしておくことが大切になるでしょう。

 ふるさと納税の背景には、地方で教育を受けた若者が進学や就職で大都市に転出していることがあります。つまり、地方が支出す?教育サービスで立派に成長した若者が、社会人として大都市に納税している、このアンバランスを少しでも緩和する効果がふるさと納税にはあります(こうした考え方には批判もありますが・・・)。

 保育園をめぐる住民の移動にも似たような構造があると思います。子育てを機に両親の仕事(勤務地)が大きく変わるわけではないので、そのまま残って居住し続けてもらう対策は可能だと思います。今回の記事で落選率が低かった自治体は、子育て支援だけでなくその後のライフステージも含めて施策を練ってほしいと思います。

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