金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第23回:話術よりも内容を重視する

 プレゼンテーションをする時、話し方つまり話術を過剰に重視する人がいます。ある人のプレゼンテーションに感動した経験があれば、「自分もあの人のように話ができたら」と確かに思います。真面目な内容なのにドッカンドッカン笑いの起きるプレゼンテーション、心に刺さって涙が溢れるようなプレゼンテーション、話に引き込まれて時間が経つのを忘れてしまうようなプレゼンテーションなど、私自身も多くの素晴らしいプレゼンテーションに触れてきました。

 ただ、「そうしたプレゼンテーションができるようになりたい」と思っても、なかなか出来るものではありません。自分の話し方を変えるのは容易ではないですし、無理に変えようとしてもお手本の人のモノマネになるだけです。むしろ、なかなかできないので自己嫌悪に陥ってしまうことの方が多いのではないかと思います。

 結局、大切なのは話術の前に内容なのではないかと思います。同じ内容を違う人が話せば受け取り方も確かに違います。したがって、話術もプレゼンテーションの要素ではあるのですが、内容をともなってこそ話術も活きるのです。そして、内容に話す人の心が入るからこそ、心の声として話すことで伝わる話術になるのではないでしょうか。どのような話し方でも「話したい」「伝えたい」という気持ちが良いプレゼンテーションに滲み出ています。

 そこで、自分が伝えたいことの中から聴衆が求めている内容を用意し、それを自分のスタイルで話すことが必要です。自分が話したいことだから自分のスタイルで話す方が発信力が出ますし、聴衆が求めている内容だから伝わるのだと思います。したがって、究極の話術は、それぞれのスタイルを貫くことに他なりません。

 私もいろいろな人の話に引き込まれ、感動します。しかし、話術に共通性はまったくなく、ギャグを連発する人もいればボソボソと話す人、「あー、えー」が多い人もいました。やはり話す人そのものの背景や特徴が多様だから、それらにマッチした話し方もいろいろになるのでしょう。その人の心から発信される話の内容があって、そこに合った話し方が乗ってくることで、素晴らしいプレゼンテーションになると思います。

 ただし、プレゼンテーションには単発のものと繰り返しのものがあります。前者は社外で行われ、後者は社内で行われることが多いでしょう。後者の場合は話す人自身をよく知っている聴衆が多いので、その人に合った話し方が聴衆にも初めから分かっていたり、すっきり入ってくることが多くなります。逆に前者の場合は初対面の人が話すので、話す人がどんな人なのかは分かりません。そのため、話術の影響も多少大きくなると思います。このように、話術よりも内容が重要であるとはいえ、話す人と聴衆との関係を踏まえる必要があることに気をつけていただきたいと思います。

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