金曜コラム「文章、プレゼンの基礎」第26回:テーマ設定は時間をかけて絞り込んでいく、そして決めた後でも柔軟に変える

 文章でもプレゼンテーションでも、「何について発信するか」を決めるテーマ設定は極めて重要です。全体のプロセスに占める割合は3割くらいといっても過言ではないと思います。

 おおまかなテーマを決めることが比較的容易にできるかもしれません。しかし、そこから具体的なテーマに絞り込んでいくことはかなり大変です。最初の段階ではいくつもの候補を考えて選択肢を広げる作業をして、徐々にその中で最もしっくりはまるものに絞り込んでいく作業になります。

 このように、「広げてから絞る」いうプロセスを経てようやくテーマが明らかになってくるのです。プレゼンテーションの場合はグループで行うこともあるので、広げる段階では多くの意見が出てきて場の雰囲気も盛り上がるでしょう。しかし、そこから絞る作業は逆に、メンバーの意向を調整していくのが大変です。出来る限り多くのメンバーの意向を取り入れたいでしょうが、それではテーマがぼやけてしまうことになってしまうので、どこかで割り切なければいけないのです。前半に盛り上がった分、後半は険悪な雰囲気になったり離脱が生じたり、といったこともあるかもしれません。

 このようにテーマの設定はその後の作業を進める上で大変重要なプロセスであり、広げてから絞るという方向性が逆のプロセスを経ることになります。そこで時間をかけて慎重に進めなければいけないのです。逆に言えば、それがしっかりできていればその後の作業が円滑に進むことになります。

 しかし、それでテーマの設定が終わるわけではありません。多くの情報を集めたり、具体的な内容に入っていったりする中で、「本当に当初のテーマが適切だったのか」と言う疑問も出てきます。そこで、途中の段階で適宜、より適切なテーマに見直していくことも必要になってきます。むしろそのほうが自然なことではないかと思っています。

 準備が大切だとは言ってもそれで全てのことが決まるわけではありません。その後の経過で準備に想定していたこととは異なることも出てくるわけです。それは当初気づかなかったことに気づくことができたので良かったとも言えます。こうして、テーマの設定は準備が大切であると同時に、プロセスに即して「育っていくものでもある」と言うこともできます。

 いったん決めたテーマを変えるのは、勇気が要るかもしれません。しかし、そもそもテーマとはそういうものだと考えを切り替えることが重要です。極端に言えば、文章やプレゼンテーションを仕上げた結果、最終的にこのようなテーマになった、ということが本来の順序なのかもしれないとも思っています。

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