日曜コラム「マイ・オピニオン」第46回:「行政は利潤を追求しない」は本当か

 公務員をめざす学生からよく聞くのは、「公務員か民間か迷っています」「公務員と民間の併願はできますか?」といったことです。今日のテーマはこの疑問に直接答えるものではありませんが、この疑問は「行政と民間は大きく異なるもの」という前提があると思うので、その違いの1つとして「行政は民間のように利潤を追求するものではない」という考え方について、私なりの意見を述べたいと思います。

 行政と民間は、そもそも収入獲得の手段が異なります。つまり、行政は税金、民間は売上です。税金は「取られる」と言われるように、法律によって定められたルールに従い、権力に基づいて徴収されます。「払いたくない」と思っても逃れることはできません。一方、売上は買い手が欲しいと思う商品やサービスを売り手から購入するものですから、「欲しくない」と思ったものには支払う必要がありません。このように、行政と民間は収入源が大きく異なります。

 そして、経済学でも学びますが、民間の行動原理はは利潤の最大化です。「欲しい」と思ってもらえるような商品やサービスを提供して売り上げを確保し、必要な経費を最小限に抑えることで利潤が最大化され、新たな商品やサービスの開発などに使われることで、経済が発展していきます。

 これに対して、行政は社会全体で求められるサービスを提供し、その財源を構成員が負担する仕組みです。そのため、民間のような利潤が生まれるとすればは負担がサービスを上回る状態となりますが、それは過剰な負担を課していることになりますので、適切ではありません。あるべき負担の水準は、必要なサービスに見合うものとなります。そのため、行政には利潤が生じないということになるのです。

 しかし、このことによって「行政は利潤を追求しない」と即断するのには違和感を覚えています。「過剰な負担を求めるのは適切ではない」というのは間違いないと思いますが、「社会にもたらすメリットを最大化する」ことは行政の使命と言えるでしょう。そして、「メリットに応じた負担は求めても良い」のではないでしょうか

 行政は「コーディネーター」と言われます。多様な国民・住民、団体・企業を結びつける役割を持っているのです。民間でもコラボ企画で新しい商品やサービスを提供することは普通にありますが、コラボによって利潤を大きくできるからです。YouTuberでもコラボが再生回数を増やすと聞きます。

 行政のコーディネーターとしての可能性は、おそらく民間よりも幅広いコラボをもたらすと思います。そこで、行政のコーディネートによって大規模なコラボが生まれ、それで社会に大きなメリットをもたらしたのであれば、それに応じた負担は求めてもよいのではないでしょうか。それほど費用がかからない場合、確かに費用に応じた負担を超えるかもしれません。しかし、メリットが大きければ過剰な負担の問題は起きないと思います。

 むしろ、こうしたコラボで民間が大きな利潤を得ていたのを抑制する効果もあります。民間は利潤の最大化を追求するので、行政が入ったコラボであっても利潤を得る動機があります。しかし、ここで生じた利潤は民間だけのものではありません。むしろ、行政が入っているからこそ生じるものも大きいはずです。行政が生み出したメリットまで民間が獲得すれば、それは民間への過剰な利益供与にもなりかねません。

 そこで、行政が生み出したメリットは、(民間が獲得すべき部分を除いて)しっかり行政が獲得することが必要になるのです。もちろん、獲得した分は住民に還元されます。より高い水準のサービスに回すことで、さらに大きなメリットが創出されれば、行政が獲得する分も増えていく好循環が生まれるでしょう。

 これは民間の利潤とは異なるものかもしれません。しかし、少ない負担で生み出した価値を最大化した部分の負担が結果的に利潤のようなものとなるだけで、適切な負担水準のうえで住民全体に利潤となる部分を還元することができるのならば、これを「行政は利潤を追求しない」として否定することはないと思います。

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