連載企画:リアル体験!地方公務員の仕事紹介「伝票のチェックはしっかり、丁寧に」
地方公務員は税金を預かり、住民に還元するのが仕事です。国家公務員も同じですが、住民の顔が見えるほど身近なところが大きな特徴です。それだけに、預かった税金を大切に使わなければならない、という気持ちが強くなければなりません。
税金を使う時は(国・県からの補助金や借金による時も同じですが)、必要事項を記載した伝票を使います。私たちが持っている財布からお金を使うように、パッと出せるわけではありません。たとえ10円のお金でも、伝票を使います。上の段には担当職員の空欄があり、支出を認める場合は印鑑を押します(これを「決裁」と言います)。そして、金額や支出内容によって、どの段階の上司まで了解を求める必要があるかは規則で決められているので、その上司に認めてもらって、初めて支出ができることになります。
なお、その上司だけに了解を貰えばよいわけではありません。例えば、部長までの了解が必要な場合は、いきなり部長に「お願いします!」と言ってもダメです。まず係長、次に課長補佐、そして課長へと一段階ずつ了解を取り、最後の(ラスボス的)部長の了解を貰う必要があります。面倒な印象がありますが、組織内での情報共有や部長の負担を減らすためには必要なことです(部長室の前に伝票を持った職員が列をなして待っていることがありました。行列のできるラーメン店のような雰囲気でしたが、こ職員の待ち時間はもったいない気がします)。
なので、伝票を作成する担当職員は、記載事項が間違っていないか、しっかり確認する必要があります。金額が間違っていないか、支出区分が正しいかなど、基本的なことは当然ですが、日付の流れは見落としがちなので、特に注意が必要です。支出をする際は、次のような流れになっているからです。
「支出負担行為伺い(支出して良いですか、と事前に了解をもらう)」→「注文・納品・確認(納入とともに納品書などを受け取る)」→「請求書」→「支出(受け取ったので支払って良いですか、と了解をもらう)」。支出内容や金額によっては、さらに複雑になったりシンプルになったりします(10億円の工事も10円のシールも伝票で処理することは同じですが、10億円の方が慎重に進めなければならないので手順も複雑になります)。それらの流れの1つひとつに書類(見積書や納品書、請求書など)があるので、日付が流れの通りでなければならないからです。請求書より見積書の方が後になる、ということはありえません。
ただ、この流れが始まってから終わるまでには長い時間がかかります。単純なものでも1週間くらい、長いものは1年単位となるので、途中で流れを見失ってしまうと、伝票がおかしなものになってしまうのです。もちろん、それでは了解が得られないので、慎重にチェックをします。支出を済ませて担当者の手元に戻ってきた伝票を見ると、いろいろな欄に黄色や赤の点が薄く付いていることがありますが、これは職員がそれぞれチェックしたところをマーカーで印を付けているからです。色とりどりの点が付いた伝票を見ると、その大変さを実感するとともに、ミスして多くの方に迷惑がかからないようしっかりチェックすることが大切だと言い聞かせて、伝票を作成していました。