書籍紹介:岡﨑昌之「まちづくり再考」ぎょうせい

 記念すべき最初のブログで紹介するのは、私が大学院生の頃に指導いただいた岡﨑先生による自治体学会主催の集中講義の内容を収録した本である。
  「まちづくり」という言葉は、今でこそ当たり前のように使われているが、この言葉がどのような経緯で生まれたかはあまり知られていない。それは「それぞれの地域社会の歴史的、文化的な個性を基礎にして、その地域に本当に必要なものを、そこに生活する人々が自らの知恵と活力で発見し実現していく創造的な過程である」というものである。重要なのは、主語が「そこに生活する人々」である、とういうことである。つまり、かなり小さな範囲で暮らす住民が主体であるべき、ということである。現代の「まちづくり」にそうした要素がどこまで組み込まれているであろうか。
 もちろん、時代が変われば言葉も変わる。しかし、あまりにも安易に「まちづくり」が使われているのではないだろうか。ただ、これは著者の思いではなく、私が感じたことである。タイトルこそ「再考」となっているが、そこに現代の「まちづくり」を否定的に捉えるニュアンスはないように思われるが(本書を含め自治体学会主催の講義録が「再考」「再論」となっていて、今回も自治の分野で大御所とも言える著者が改めて論じた、ということではないか)。「まちづくり」を進めている我々の世代も、あらためてその原点を学び、現代に継承・発展させていくべきであろう。
 本書には、著者が関わったまちづくりの事例が豊富に収録されている。未開の分野に飛び込み、北海道から九州まで実に数多くのまちづくりに関わってきたことが理解できる。北海道池田町のワインづくり、沖縄のシマおこし、愛媛県内子町など、私も著者に連れて行っていただいた場所も含まれている。読者がひとつひとつの事例を噛み締めることで、これからのまちづくりにも活かせるのではないだろうか。
 また、人口減少や地方消滅に対する著者の見解も興味深い。まちづくりの視点から見ると、人口減少社会が必ずしも不幸とは言えないこと、定住人口から交流人口にあらためて着目すべきこと、人口構成が重要なことなど、興味深い見解が紹介されている。また、若者が地方の課題解決に強い関心を持っている傾向が強調されている。それは、データのみならず、著者が接してきた多くの若者から感じられたのだろう。なお、著者は2014年に「地域は消えない-コミュニティ再生の現場から」(日本経済評論社)も編集・出版した。タイトルが地方消滅論に対する著者の見解を象徴しているだろう。
最後の章では、3本の対談が収録されている。実際にまちづくりに関わった方々(現職または元公務員)との対談で、苦労話も含めて当時の様子がありありと浮かび上がってくる。地方公務員をめざす人々にも「どんな公務員であるべきか」のヒントが見つかるであろう。
 多くの人に読んでもらいたい本である。

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