火曜コラム「オススメ書籍」第14回:毎日新聞取材班著「公文書危機 闇に葬られた記録」

 歴代最長として歴史に名を刻むことになった安倍政権。しかし、最近は支持率の低下が進み、首相の健康不安説まで囁かれています。私はその真偽を知る由もありませんが、森友学園への土地売却問題をめぐる公文書改ざんや桜を見る会をめぐる招待名簿の破棄など、公文書に関する不透明性もまた支持率低下の大きな要因になっていることは間違いないでしょう。本書は、それらの公文書をめぐる関係者への取材を通じて見えてきたことをまとめた記録です。

 私も地方公務員を経験しているのですが、国の場合ここまで公文書が公務員にとって「危険な存在」と見られていることを知って驚きました。公務員にとって「公文書の適切な管理」とは、「不都合な文書はなかったことにする」と捉えられているようにさえ見えます。つまり、不都合な情報は文書として残してはいけない、ということです。桜を見る会などは、そうした取り扱い方がなされているように感じます。

 もっと驚いたのは、「メールは公文書ではない」という認識です。メールのような電子記録も法的には公文書ですが、「メールは電話で話すのと同じだから」と認識されているようです。確かに、電話での会話は録音されないので、公文書にはなりません(応対記録などを作成すれば記録の内容は残ります。しかし、よほど重要な内容に限られます)。電話は相手が会議や外出中では伝えられませんが、メールならいつでも開封できるので、電話よりも便利です。だから、電話に代わってメールを伝達手段に使うのは、効率的だと思います。「公文書になるから」という理由でメールから電話に戻って仕事が非効率になってしまうのも問題です。

 しかし、こうした状況があるからこそ、情報は以前よりも残る(残らざるを得ない)形になってきています。電話ならば証拠がないため「言った、言わない」の水掛け論になっても、メールは消さなければ残るので、そうしたトラブルも回避できます(ドラマ「半沢直樹」でもメールは証拠としてたびたび登場します)。仮に公文書が改ざんされなかったとしても、どのような経緯で公文書が作成されたのかまで分かります。だからこそ、公文書の廃棄や改ざんなどが問題とされるのではないかと思います。

 公文書の廃棄や改ざんが確実に政権の支持率を低下させているのであれば、隠蔽体質では政権は維持できません。真の意味で公文書を適切に管理する必要性が問われるようになるでしょう。かつて「密室政治」などと呼ばれても何が決められているかまで分からなかったかもしれませんが、今はどれだけ情報を隠そうとしてもどこかに隠れている可能性があり、いつ明るみに出るか分からない状況になっています。今後は、公文書や情報の適切な管理のあり方、さらには政治プロセスのあり方まで含めて、大きく変化していくのではないかと考えます。

 本書は、そうしたことを感じさせる意味でも、優れた内容だと思います。

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