水曜コラム「今週前半のニュース」第7回:住民税の値上げは妥当か?

 今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

 2021年度から住民税の値上げを予定。どんな人が対象?

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 税率の引き上げではなく控除の引き下げによる増税は、税の趣旨を反映しているかどうか。特に、基礎控除の段階化は住民税の実質的に累進化させるが、果たして適切か。

 私の地方公務員としてのキャリアは住民税の課税業務から始まったので、住民税の仕組みはよく理解しています。毎年、大小さまざまの見直しがあるので細かいところは必ずしも追いついているわけではありませんが、私の知っている範囲でコメントしたいと思います。

 今回の住民税の見直しは、主に給与所得の方を対象にしています。つまり大半の労働者が対象になっているのです(ただし、後で述べるように今回の見直しで増税となる人はごく限られています)。住民税は所得課税と呼ばれるもので、所得に応じて税額が決まります。国の所得税も同じです。他の課税方法としては、消費税のように商品に一律(軽減税率もありますが)課税される消費課税や、固定資産税のように財産の有無による資産課税などがあります。

 所得課税として国の所得税と地方の住民税はいずれも大きな税収となっていて、制度も非常によく似ていますが、趣旨は同じではありません。所得税は累進課税で、高額所得者ほど高い税率が課せられる累進課税となっています。財政学の用語で言えば、負担する能力の高い人ほど高い税率を納める「応能課税」の考え方に基づいたものです。国は生活保護や社会保障等の所得再分配を行っていて、累進課税の所得税と合わせて再分配の機能を保持しています。ただし、ここ最近は「高い税率が勤労意欲を阻害する」という観点から最高税率は以前ほど高くありません。

 これに対して、住民税は所得の大きさにかかわらず一律10% (都道府県と市町村の合計)となっています。これは地方自治体では所得再分配機能を十分に果たせないことや、提供される行政サービスに応じた税額となる「応益課税」の考え方に基づくもので、固定資産税と住民税が地方税の大きな部分を占めていることからも分かります。

 今回の住民税の見直しは、所得水準によって給与所得控除と基礎控除を変更するもので、所得水準の高い層で(合計所得金額が2400万円を超える方に限られますが)増税となるため、応能課税の要素が組み込まれたことになります。実は、2019年にも配偶者控除等が同じように見直されたので、今回の見直しで応能課税の要素が強まったと言えるかもしれません。

 ただし、かつては住民税も所得税ほどではありませんが、緩やかな累進構造となっていました。それが小泉政権の時期に行われた三位一体の改革によって、一律10%となったのです。その目的は、地方税の拡充と格差の縮小に加え、住民税の応益課税としての主旨を強めるものとされています。

 以上の経緯や地方自治体の行政サービスの性質を考えるならば、応益課税の方が合っていると思われるので、地方財政が厳しいとはいえ、こうした形での増税には税の主旨からみれば問題がありそうに思います。

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