木曜コラム「公務員の仕事」第37回:確定申告の受付

私が地方公務員になって最初に配属されたのは税務課というところで、住民税の課税を主な仕事にしていました。今回は、2月に入ると確定申告のシーズンになるので、当時のことを思い出しながら確定申告でどのような仕事をしたのか紹介したいと思います。

確定申告といえば国の所得税に関係しているので、税務署が所管しています。しかし、事業や不動産など所得の種類によって申告が複雑になるものと、給与や年金のように簡単に申告できるものがあるので、後者の申告は市役所でも受け付けていて、私も対応しました(ただし、最終的な提出先はあくまで税務署です)。

また、所得税のかからないパートさんなどの場合は確定申告をしても課税されないので、市民税の申告をしてもらうことになります。これは税務署ではなく、まさに市役所の仕事です。

2月に入ると、所得税の還付を求める申告などの対応が中心になります。最も多かったのが、医療費控除だったと思います。医療費控除とは、多額の医療費(年間10万円以上がだいたいの目安)を負担した場合(生命保険などで戻ってきた分は負担から差し引かれます)に所得税の一部が還付されるもので、確定申告をする必要があります。費用がかかったことを証明するために、病院の領収書などを持ってきてもらい、費用の計算などをします。入院とか手術のような場合、持病の治療で定期的に通院している場合など、さまざまな理由で手続きに来られます。計算や申告書の作成をしている間に世間話などでコミュニケーションをとることも、市役所ならではではないでしょうか。

ただし、注意すべき点があります。それは、医療費控除は「所得税の一部」が還付される、ということです。つまり、支払った税金が限度額となります。
例えば、高齢者の場合は年金生活などのために所得税そのものが少ないので、多額の医療費がかかっていてもほとんど還付されない場合があります。非課税の方には還付そのものがありません。このことがあまり知られていなくて、「病院に払った医療費が返ってくるんでしょ?」と言って大量の領収書を持ってこられる方に、「そうではなくて、仕組みは・・・」と説明するのが大変でした。返ってくると思ってわざわざ来たのに返ってこない、領収書を探して持ってくる人もいますし、混んでいる時は長い時間待たされるので、そうした苦労もムダになってしまいます。誤解とはいえ落胆は大きく、私も何だか申し訳なく思ってしまいます。

税制は簡素・中立・公平という重要な原則があるのですが、分かりにくい部分もたくさんあります。例えば、消費税の軽減税率でも店内で食べる場合と持ち帰る場合で税率が違う、ということがかつて話題になりましたが、住民税や所得税でも分かりにくい面がたくさんあります。

いよいよ確定申告の時期になりました。正確な情報に基づいて、節税の方法もしっかり押さえながら、適切な申告と納税をしていただきたいと思います。

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