水曜コラム「今週前半のニュース」第10回:公務員の接待は問題だが、必要な交流が過剰に抑制されると政策の劣化をもたらすことにも注意が必要

 今週前半も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

 会食接待問題が国民に与える「意外と大きな影響」に気づいていますか?

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 接待問題の報道が大きすぎて、公務員の実態が正しく認識されていない。この記事は、そうした報道には現れてこない圧倒的多数の公務員像を明確にしてくれる。

 今回のコメントは、この記事に真正面から切り込むものではなく、私の経験も参考に地方公務員とりわけ市町村職員の事情について述べたいと思います。

 私が勤めていたのは人口68,000人ほどの規模なので、小さなコミュニティです。私自身は地元出身ではなかったのですが、同期の他の職員はほぼ全員が地元出身、しかも同じ学校、同じクラスの同級生という状況でした。つまり、社会人になる前の関係が非常に強いのです。このことは単年度、しかも市役所という小さな単位での話ですから、他の年度、他の企業に広げるとさらに広くなります。親戚や近所の人などもいますので、話を詰めていくと必ず誰かと何かがつながってくるというのが実感です。

 菅首相の長男が公務員を接待していたことが問題となりましたが、もう少し広く民間企業の人と公務員とのつきあいとして捉えてみると、地方の市町村職員は(意図の有無は別として)非常に多いのではないかと思います。それこそ、法事に出席したのに民間企業と市町村職員の親類が同じ席で会食をして何気なく仕事の話をすることや、たまたま立ち寄った居酒屋に同級生や知り合いがいて流れで一緒に飲む、というようなことも頻繁に起こりうるわけです。私は飲み会にあまり行く方ではなかったのですが、家族で買い物に行くときも必ずと言っていいほど知り合いの方に会い、時には挨拶も交わします。

 適切かどうかを判断する間もなく、急にそうした場に自分が置かれることがあるように思います。ある程度事前に予定が立っているのであれば金銭のやりとりなども事前に伝えておくことができるかもしれませんが、たまたま寄った居酒屋に親戚がいて飲み代をおごってもらった、その親戚と仕事上の利害関係があった、などというようなこともありえます。人事院の解説を読むと、必ずしも違反ではないケースもあると書かれていますが、「公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがない場合」ということであれば、ケースバイケースで、また報道等の取り上げられ方にもよるのではないかと思います。

 そうしたこともあって、私は「会食はなるべくしない方が良い」と考えていました。しかし、民間企業の方に協力や知恵を得て進めなければならない仕事も多く、どうしても前のめりになれない面が出てきます。今回の報道は、公務員が問題のある行動を抑止する効果はあるものの、行き過ぎると必要な行動まで抑制されて国民や地域住民へのサービス低下につながってしまう懸念もあります。しかも、そうした抑制がどのようなデメリットを社会に及ぼしたかが検証できないので、誰にも認識されることがありません。

 難しい問題かもしれませんが、こうした問題が一方の方向に行きすぎないよう、冷静に捉えることも大切ではないかと思っています。

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