月曜コラム「公務員への道」第47回:公務員試験ではなぜ過去問が大切なのか
公務員試験を独学で突破しようと頑張っている人は多いと思いますが、独学の人のための勉強法などを読んでいると「過去問をすることが大切だ」と書かれているものが多くあります。私もそれに賛成ですが、ここではなぜ公務員試験では過去問が大切なのかを、大学の受験勉強と公務員試験の違いを考えながら述べたいと思います。
第1に、公務員試験は出題形式が決まっていることです。教養と専門いずれも5つの選択肢から1つを選ぶ形式です。もちろん、正しいものを選ぶだけではなく、誤っているものを選んだり正しいものの組み合わせを選んだりする場合もあります。しかし、いずれにしても5つ選択肢の中から1つを選ぶことは変わりありません。これは国家公務員・地方公務員いずれも同じです。
大学受験の場合は、大学ごとに選択式や記述式のさまざまな形式が組み合わされます。したがって、テキストで基礎をしっかりと身につけた上で、さらに大学ごとの形式に沿った問題を解くことが必要になります。公務員試験は形式が同じなので、テキストの必要性は大学受験よりも低いと言えるでしょう。その分、過去問の重要性が高くなるのです。
第2に、科目の幅が広いことです。大学受験でもセンター試験などでは多くの科目がありますが、公務員試験はそれよりも幅広い科目から出題されます。そこで、1つ1つの科目を基礎から学ぶ余裕がないのです。配点の高い科目、特に出題数の多い分野に力を入れるなどのメリハリが求められます。そうなると、やはり公務員試験は体系的に学ぶ必要性が大学受験よりも低くなるわけです。テキストよりも問題集をした方が手っ取り早い、ということになります。
第3に、問題を解く方が勉強の効果も高まることです。池谷裕二さんの著書「受験脳の作り方」によれば、暗記の勉強をするよりも、テストを解くことで身につけた方が暗記の効果が高いと書かれています。大学受験の場合には、英語の単語帳や歴史の年号、数学の公式など体系的にまとめられた暗記用の書籍が多く出版されています。こうしたものをを使って暗記したことは、さらに大学ごとの出題形式に合わせて回答していくことで得点になっていきます。
公務員試験にも暗記の科目がたくさんあります。暗記用の参考書も出版されています。しかし、大学受験と違うのは出題形式が共通していることと、体系的でなくても良いことです。そのため、こうした参考書を必ず使わなくても、問題を多く解いていくことで、試験に出る重要な知識を厳選して効果的に身につけることができるようになるのです。もちろん暗記用の参考書を有益ですが、これらは直前期にサッと全体の復習をしておく形で使うことが良いとされています。
公務員試験に出る科目は、実際に公務員になった後に仕事で使うものも多くあります。試験に合格するためだけの勉強は長い目で見ると適切ではないのかもしれません。しかし、それは公務員になってから必要なところだけを学べばよいのです。あくまで公務員試験は公務員になるための勉強と割り切って、過去問を中心に効果的に効率的に進めた方が良いでしょう。