面接で話したい、気になるニュース:光熱水費上昇の影響は予算の圧迫だけではない-2つの「意外な影響」とは?
このコーナーでは、今週ツイートしたニュース記事の中から特に印象に残った1つをピックアップして、掘り下げてみたいと思います。
今週は、次の記事を取り上げたいと思います。
公共施設でもかさむ光熱費「このままでは電気代が払えない」 全国の自治体、億単位の補正予算相次ぐ
この記事について、私は次のようなコメントをしました。
エネルギー価格高騰の影響は、自治体予算にも及ぶ。特に施設の光熱費は支出増加に直面し、財政への圧迫も大きいだろう。
自治体にとって光熱水費上昇の影響は、さまさな分野に及びます。単に値上げで財政が圧迫される、と言うだけにとどまらないのです。今回は、2つの「意外な影響」について述べたいと思います。
まず、光熱水費が上昇すると、予測を超える場合は補正予算で増額しなければなりません。これは仕方がないのですが、光熱水費はある程度上昇しても何とかやりくりできる金額を当初予算の段階で確保しています。つまり、ある程度の上昇であれば補正予算で増額することが難しい、ということです。しかも、公共施設の維持管理に関する予算は施設ごとに確保されているので、他の施設は補正予算で増額しないのにこの施設は増額する、ということになるとバランスや見た目も悪くなってしまいます。なので、他の支出を抑えてでも補正予算での増額は避けたい気持ちが強く働くのです。光熱水費の予想以上の上昇は、こうした問題を噴出させることになります。
もう1つは、施設の修繕が後回しになりやすくなることです。光熱水費は予算では「需用費」という支出項目に該当します。需用費は幅広い支出が可能で、光熱水費だけでなく修繕費も含まれています。つまり、光熱水費が少なくて済めば予算に余裕が生まれて修繕を行いやすくなるのですが、逆に光熱水費が上昇すれば修繕の予算が食われてしまうことになるのです。
修繕は、「ここが壊れそうなので直すかもしれない」という想定の下で予算が確保されることが多くあります。自分の身の回りでも、例えばエアコンがそろそろ古くなってきた、と分かっていても、動いている間は取り替えない、壊れてから考えよう、ということになります。公共施設でも建物や設備の老朽化が進み、壊れてしまえば直さなくてはならないのですが、そろそろ壊れそうだと予想はできても本当に壊れるかどうかは分かりません。できれば壊れずに使い続けたいものです。なので、本当に壊れるかどうか分からない状況で修繕の予算を確保するのは難しいのです。
そこで、光熱水費が余りそうならば年度末に修繕する、ということが起こりやすくなります。施設を管理する際も、光熱水費をできるだけ抑えて修繕に回す、という意識が生まれてくるのです。
しかし、光熱水費が上昇すれば、逆に修繕したくてもできない、という状況になります。施設や設備の不具合に対応できなくなってしまうのです。光熱水費が原因で修繕に影響が及ぶ、という形になるわけです。
光熱水費の上昇は自治体の予算を圧迫するのはもちろんですが、予算の仕組みを通じて他の分野にも及んできます。私の自治体職員の経験から、こうしたことが多くの自治体で起きてくるのではないか、と懸念しています。