木曜コラム「公務員の仕事」第2回:税務部門-納付書を通じた市民とのコミュニケーション

 税務部門の仕事について私の体験を基に書いている。前回の投稿に続き、納付書を発送した後のことを紹介したい。納付書発送してホッとしたのもつかの間、市民の方から様々な問い合わせが来る。納付書に書いてある税金の額を見て、確認の電話が来るのである。

 住民税は前年の所得に基づいて課税される。通常、所得が多ければ課税額も高くなる。 サラリーマンや年金受給者の場合は毎年の所得も課税額もそれほど変わらないはずである。しかし、去年よりも高額な納付書が来ることがあり、驚いてその理由を聞かれるのである。

 こちらは、根拠となる数字を含めて丁寧に説明する。去年と今年で何が違うのかも、調べて説明する。臨時収入があったことを忘れていたり、扶養控除の漏れなども分かることがある(控除の漏れが判明すれば修正申告をして、税額を再計算する)。本人の確定申告や勤め先からの源泉徴収票等に基づいて正確に計算をしているので、しっかりと説明すれば理解が得られる。

 ただ、分かりにくいのは所得税との違いである。所得税は国の税金で、住民税と同じように所得に基づいて課税される。制度もほとんど変わらない。しかし、大きな違いがある。それは、課税のタイミングである。所得税は給料を得た時にその給料から差し引かれ(源泉徴収)る。そして、 年末に一年間の税金を確定し、すでに払った税金が不足していれば追加納付し、超過していれば戻ってくる(年末調整)。確定申告は、年末調整ではできなかった所得や控除を行うものである。いずれにしても、所得税はその年の所得に基づいて課税されるのである。

 これに対して、住民税は前年の所得に基づいて課税される。同じ職場で働いているサラリーマンや年金受給者の方は前年の所得もそれほど違いはなく、所得税と住民税が差し引かれているので、課税のタイミングが違っていても気にならない。しかし、3月に会社を退職した場合、それ以降は給料が出ないので所得税も引かれなくなるが、住民税は前年の所得に基づいて課税され、その納付書が5月に送られてくる(会社で引くことはできないので、個人で支払うケースが多い)。そのため「もう給料をもらっていないのに税金の請求が来た」ということで、市役所に「間違いではないか」との問い合わせが来る。「もう給料をもらっていないし、所得税もかからないのに、なぜ住民税だけかかるのか」ということであろう。

 住民税は、1月1日に住んでいる自治体が前年の所得に応じて課税する形であるから。課税自体は間違っていない。しかし、今まで給料から差し引かれてきた税金が、給料もないのにかかるという点に納得が得られないのである。旅行や買い物を予定しているかもしれないから、予想外の出費にテンションが下がってしまうかもしれない。制度なので仕方がないのだが、市民の気持ちも「その通り」と感じながら説明していた。

 課税する側の対応として、退職した時に「後で住民税の納付書が届く」ということを積極的に発信しておいた方が良いかもしれない。

 そのかわり、就職して1年目は住民税がかからない。昨年まで学生で所得がなかったから、制度上そうなる。その時に得した気持ちになったことなど、すでに忘れている。私もいずれ退職して、その後に納付書が来ると、仕組みは分かっていても同じような気持ちになるかもしれない。

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