火曜コラム「オススメ書籍」第11回:橋本勇著「知っているとトク 知らないとソン 自治体職員の就職から退職まで」ぎょうせい
地方公務員に求められる資質や労働環境等に関する制度の説明は、多くの場合、地方公務員法を中心に法体系として説明される。しかし、本書は視点を地方公務員自身に変えて、キャリアや仕事現場のさまざまな想定から、関連する制度を説明している。地方公務員が自らのキャリアや仕事の課題に直面した時に、調べる形で本書を当たってみるのが良いかもしれない。
また、地方公務員をめざす人が、自分が地方公務員になった時にどのようなキャリアや仕事現場を経験し、それに関する制度がどうなっているのかを知りたい場合に読むこともススメられる。特に、給料や昇進等のことは面接などでも聞きづらいので、こうした本が役に立つだろう。
制度に関する説明は、最近の判例を含めて詳細になされている。本書は2018年12月に刊行されているので、最近の制度改正も反映されている。私も地方公務員の経験があるが、通常の仕事で意識していなかったことまで説明が尽くされていて、(すでに退職しているが)いろいろな発見があった。そこまで細かく知る必要がない場合は、全体像をつかんでおくだけでも良いだろう。
また、説明されているのは制度だけではない。例えば、人事異動については、いったん就職した後の最も関心の高い事柄であるが、制度よりも知りたいのは実態の方であろう。本書は、制度の説明を軸に全体の統一性は保ちながらも、実態の面にも触れている点は良かったと思う(実態をイラストなどを使って分かりやすく知りたい人にとっては、本書は少し難解でカタい印象はあるかもしれないが)。
いずれにしても、本書はタイトルにもあるように就職から退職までという時系列で、地方公務員自身の視点からキャリアや仕事現場について詳細な説明を行う、意義深い本だと思う。自身のキャリアアップに即して適宜参照する形で、また、就職の際に自分なりのキャリアプランを描く参考として、本書は活用しうるだろう。