月曜コラム「公務員への道」第12回:制約があるからこそ伸びる

 何かをめざして精進する人にとって、制約はできるだけ避けたいものである。例えば、今、コロナ禍で外出がなかなかできない。そのため、アスリートは立派な施設でトレーニングすることはできないが、そのかわり自宅でトレーニングしている。また、レストランはお客さんが減っているので、テイクアウトを始めている。われわれもまた、テレワークなどで仕事をするようになった。このように、コロナ禍であっても、外出できないという制約がある中で、それを克服しようと新たな取り組みが行われている。

 もちろん、新型コロナの収束を誰もが願っている。早く活動が元に戻ることを願っている。だが、それまで何もできないのではなく、できることを探して、できるだけ元の状況に近い環境に自らを置こうとしている。また、これまで気づかなかった良い方法があれば、新型コロナが収束しても続けることで、ピンチをチャンスに変えることもできるだろう。

 こうした制約は、コロナ禍でなくても存在する。野球の練習がしたいのにグラウンドがない、公務員試験の勉強をしたいのに近くに予備校がない、自宅で静かに過ごしたいのに家族の会話が聞こえてしまう、などが思い浮かぶ。何かをしたい、何かを目指したいのに、それができる十分な環境がなく、そのためにしたいことができない、目指したいものになれない、ということである。

 しかし、ほとんどの場合、こうした制約はむしろ成長の条件である。誰にでも何らかの制約がある。問題は、それをどう認識するかである。「制約があるから〇〇できない」と捉えてしまうと、その制約は単なる自分への言い訳にしかならない。「〇〇したい」「〇〇になりたい」という気持ちが本気でなかったことを隠すために使い、自分のプライドを守るための道具に変わってしまう。自分が本気であれば「制約があるなら乗り越えたい」「制約にもプラスの面があり、それを活かす」という気持ちになって、むしろ成長のきっかけにするのではないか。だから、制約は成長の糧になり、ピンチをチャンスに変えることもできるのである。

 もちろん、オリンピックでメダルをめざすような人は、最高の環境であることが望ましい。海外の高地でトレーニングをするマラソンランナー、スケートの本場に自ら飛び込むスケート選手、ノーベル賞級の研究に触れるため海外の大学に渡る研究者などが思い浮かぶ。すでに多くの制約を乗り越えて高いレベルに到達した人には、さらなる高みに到達するには一切の制約がない環境が必要である。それくらいの状況になって、初めて制約が障害になるのではないか。

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