木曜コラム「公務員の仕事」第22回-長期計画の策定プロセス(3)審議会への諮問と答申

 長期計画の内容を最終的に決めるまでには3つのプロセスがあり、前回の投稿では最初のプロセスとして職員による「たたき台」の作成について紹介しました。

 今回は、第2段階として審議会の役割を述べたいと思います。長期計画は自治体が進める政策全般を収録したもので、いわば計画総覧という存在として最も重要なものとなります。しかし、これは首長が独自に作成するのではなく、審議会という組織に諮問(計画を審議してください、と依頼)する形をとります。もちろん、重要な計画なので審議会という組織も条例で明確に規定されていて、そのメンバーは公務員の身分を持ちます(常勤の公務員ではありませんが)。その審議会が、首長からの諮問を受けて長期計画の審議をするのです。

 審議会のメンバーは、多様な立場の人々で構成されています。学識経験者、経済・福祉・まちづくり・環境…など、それぞれの分野を代表する市民の方が中心です。したがって、長期計画は市民が作るということもできるわけです。

 ただし、審議会のメンバーはそれぞれの立場に直結する分野では強い関係やこだわりがありますが、あらゆる分野の政策に精通しているわけではありません。また、自治体の長期計画に求められる表現や様式などにも、慣れていません。

 そこで、担当職員が中心となって作成した「たたき台」が生かされるのです。たたき台があれば、審議会のメンバーがそれぞれの専門分野に関連する部分を見て、気づいた点の修正や追加等をすることで意見が反映されます。

 ここも、やはり担当職員の腕の見せどころです。審議会のメンバーがそれぞれ意見を自由に述べることは大切ですが、あまりにもバラバラな意見だと収拾がつかなくなってしまいます。そこで、「たたき台」を作成する段階で審議会メンバーが考えていそうなことをイメージしておくことが大切です。これができていれば、審議会メンバーから出る意見もあまりバラバラにならずに済みます。

 また、仮にバラバラな意見が多く出てきた場合に、それを上手に計画に取り入れていくことも担当職員の力量がものを言います。1つのものごとに対して「A」と「B」という反対の意見が出てきた時は、両論併記のうえで「AとBという意見を踏まえて慎重に検討を進めていく」など、やや抑えた表現にするといったようにです。

 こうした会議は何度か開かれます。分野別に部会に分けたりもします。出てきた意見が取り入れられたかどうか(取り入れられなかったとすれば、なぜか)なども全員で確認して、最終案としてとりまとめられるのです。この過程も半年くらいはかかります。

 いずれにしても、審議会という存在があり、市民が主体となって長期計画が審議されていく、という次の段階がこのように進んでいきます。とりまとめられらものは、首長に「答申」という形でお渡しすることになります。

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