土曜コラム「今週後半のニュース」第33回:公務員の魅力はこれからも盤石なのか?

 今週の後半(昨年末から今年初にかけて)も多くのニュースにコメントをしましたが、今回は次のニュースを改めて取りあげたいと思います。

大学1・2年生の「希望の就職先」、コロナ禍でも航空・鉄道会社が人気 IT企業で上位だったのは?

 このニュースについて、私は次のようにコメントをしました。

 名だたる大企業を抑え、公務員の人気は相変わらず高い。毎年のように国と地方でワンツーフィニッシュ。

 学生の就活において人気企業をランキング化している媒体はいくつかありますが、多くが企業に限られています。このランキングはリスクモンスターというところが発表しているのですが、公務員もランキング対象になっていることが特徴です。しかも、地方公務員が1位、国家公務員が2位と、公務員がワンツーフィニッシュとなっていて、ワンツーが入れ替わることはあってもほぼ毎年のように上位を占め続けています。

 公務員は給料こそ決して高いとは言えないものの(地方では高いといわれていますが)、安定していてクビになることがない、といった点が人気の背景にありそうです。また、充実した福利厚生や仕事の負担が少ない(と思われている)こと、転勤が少ない(と思われている)ことなども人気を後押ししていると思います。学生自身だけでなく、保護者にとっても、また結婚相手としても公務員が大きな支持を得ているとも言われています。賃貸住宅の入居や住宅ローンなどでも、公務員の信頼性と安定性が高く評価されているように思います。

 このように、公務員の人気は高いのですが、仕事そのものに対する評価はあまり見ません。特に、地方公務員の場合は人事異動によって目まぐるしく仕事内容が変わります。まるで転職するかのように、環境から福祉へ、さらには教育へ…といったように実に幅広い仕事に携わっているのです。

 なお、仕事内容についてはルーティンワークが多く、機械のように仕事を進めるというイメージも強く、営業活動やノルマのようなものもないので重圧も少ないと思われているのではないでしょうか。こうしたことから、公務員人気が高いことに対して「チャレンジしない若者が増えている」と嘆く大人もいますが、公務員の仕事がルーティンワークで占められていると考えられているからではないかと思います。

 しかし、公務員の仕事はこれから大きく変わるでしょう。転職のような人事異動によって公務員は広い視野を養うことができるのですが、特定の分野に深く精通できないという欠点や、すぐ担当が変わってしまうので住民が戸惑う、といった欠点もあります。また、ルーティンワークもこれから減っていくでしょう。それは、特に地方自治体が創意工夫をこらした政策を創造していかなければならないと同時に、ルーティンワークがAIに置き換えられていくことなどが要因です。私は公務員を目指す学生に「これからの公務員はアントレプレナーシップを持たなければならない」と強調していますが、公務員の仕事も大きく変わってくると思います。

 このように述べると、公務員へのイメージが変わり、場合によっては魅力的に映らなくなってしまう可能性もあります。しかし、身分保障や安定だけで数十年と仕事を続けても面白くないと思います。こうした変化を見越して、ますますモチベーションを高められる人こそこれからの公務員にふさわしい人材になると思います。

 こうした思いを持って、今回のランキングを見直してみると、公務員人気にOB(中途退職ですが…)としてうれしいと思う気持ちと危機感の両方の気持ちが出てくるのではないでしょうか。公務員の魅力はこれからも盤石とは限りません。しかし、それでもなお(もっと)公務員と言う仕事の魅力を感じてくれる学生が増えることを期待したいと思います。

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